石破はなかなかうまくやっている。昨年11月にトランプが再選を果たしたあと、石破は「第2の安倍」を演じるよう相当なプレッシャーにさらされた。自民党の有力者らは、石破もトランプタワーやフロリダのマールアラーゴに馳せ参じ、トランプにゴマをするよう促した。今年2月になって、石破はようやくホワイトハウスの大統領執務室でトランプと対面で会談する機会を得たが、とくに記憶に残るようなものではなかった。
ただ、トランプは会談の冒頭、米国の680億ドル(約9兆7000億円)の対日赤字はすぐにでも解消できるはずだとの考えをちらつかせた。「日本にとってとても簡単なことだと思う」とトランプは言った。「わたしたちはすばらしい関係にある。何も問題にならないのではないか。彼ら(日本)も公正さを望んでいる」
日本側は、日本政府にとってもたいへん重要な企業取引、日本製鉄による141億ドル(約2兆円)でのUSスチール買収をめぐってもトランプの言動に振り回されてきたほか、トランプの側近らが日本との貿易協定はすぐ結べると示唆した点にも留意していた。
その後100日以上たって、石破の通商チームは米国側への信頼をすっかり失ってしまったように見える。彼らは、米政府が中国に145%という漫画のような高関税をかけ、「すばらしい関係」であるはずの同盟国・日本にも24%の「相互関税」で脅すのを目のあたりにした。この関税は自動車に対してすでに課せられている25%の追加関税に上乗せされるものであり、後者はすでに発動してアジアでリセッション(景気後退)のリスクを高めている。
日本側の交渉役を務める赤沢亮正・経済再生相は先週、「自動車、自動車部品、鉄鋼・アルミニウム(への関税)、『相互関税』を含め、米国の一連の関税措置はきわめて遺憾である」と重ねて表明し、それらの「見直し、すなわち撤廃を強く求めていく立場に変わりはない」と強調した。
これは、米国側のスコット・ベッセント財務長官、ハワード・ラトニック商務長官、ジェイミソン・グリア通商代表部(USTR)代表に屈しそうな政府の言葉に聞こえるだろうか。日本は通商交渉に臨むにあたって、膨大な時間をかけてデータを調べあげ、さまざまなシナリオを検討し、ストレステストを行い、発言内容を綿密に打ち合わせし、受け入れられる限界を決め、いざという場合のプランも十分に用意する。それに対して、トランプのチームは行きあたりばったりという印象だ。


