ところが、帰宅後、自宅で文字起こしと要約の成果を確認したところ、十分に聴き取れていない部分も多かった。録音時に何語がメインで話されるかなど、それなりの初期設定の検討が必要なのだろうが、「蒸魚鼓油」や「藤椒油」といった専門的な用語の文字起こしが厳しかった。多言語が使われる場では、特に固有名詞の把握が難しいようだ。
また筆者のような職種の人間は、単なる要約ではなく、話し手の個性的でユニークな表現や言い回しこそ、拾い出して記事にまとめたいと考えるものだ。そういう主観的な表現はAIの要約ではあまり拾い上げてはくれないかもしれない。
だが、その場合は、文字起こしされたテキストを目で追いながら、該当箇所にあたる音声を聞けば解決できる。不十分ながらも一応テキスト化されているので、どの部分の音声を聞けばいいか、あたりもつけやすいのだ。
AIの要約というのは、少々押しつけがましいと感じるところもある。「このテーマであれば、この論点も必要だ」「今後の戦略が触れられていない……」など細かく提案してくるところは苦笑する。AIは課題解決を自らのミッションとしているせいなのだろうか。
「会議」や「講義」など、要約の仕方もいくつかタイプあり、それらを内容に応じて適切に使い分けるスキルが必要なのだろうが、まだ筆者も十分使いこなせていないのが正直なところである。
これまでさまざまな取材で収録した大量の音声データが筆者のPCのハードディスクに眠っているが、「Import」という機能を使うと、そのデータをあらためて要約し、文字起こしもしてくれる。昔お会いしたさまざまな人物の顔を思い浮かべながら、いつかそんなことができたらと思ったりもする。
結局、人間がいかにAIを活用し、慣れ親しんでいくか、しばらくはキャッチボールが必要なのだろう。だとしても、今回手に入れたAIレコーダーというワークツールとの新たな付き合いが始まっていくことを楽しみにしている。


