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2025.06.02 13:30

成長を繰り返す「逆境レバレッジ」経営、河野貴輝TKP社長の逆転劇

河野貴輝|TKP 代表取締役社長

一度転んでも、けっしてただでは起きない──。

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河野はその不屈の精神を10代のころから発揮している。弁護士を夢見て大学受験したものの、志望校は不合格で慶應義塾大学商学部に。人生で初めての大きな挫折だった。

「弁護士がダメならビジネスの道に進もうとスパッと諦めました。当時の会社法は、会社設立に資本金1000万円が必要。学生のあいだに1000万円つくることにしました」

1000万円のつくり方がふるっている。塾講師などで稼いでいた月20万~30万円を株式に突っ込んだのだ。

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「投資顧問会社に騙されたりして、失敗ばかりでした。いちばんひどかったのは渋谷の某証券会社。薦められて買った会社がその日の夕方に倒産したんです(笑)。でも、『ひどいじゃないか』と迫ったら、起業家の集まる会議に入れてくれた。そこにいたのは、のちにビットバレーの立役者となる経営者たち。インターネット黎明期の錚々たる顔ぶれとここで知り合ったことが、のちの起業につながりました」

起業後も失敗の連続だった。上場準備中の08年にリーマンショックが発生。上場を見送ったために借金してVCなどから株を買い戻すハメになる。しかし、それによって河野の持ち株比率が高まり、17年の上場では最初の上場検討時とは比べものにならないほどの富を得た。意図して失敗したわけではないが、失敗すればそれを糧にさらなるチャンスを呼び込むのが河野のスタイルだった。

リージャス買収劇から得たのも、のれん代に関する教訓だけではない。24年12月、TKPは出資するAPAMANからレンタルオフィス「fabbit」事業を譲り受けた。レンタルオフィス事業への再参入になるが、「前回とはまったく違う」と強調する。

「全国210拠点あるTKP施設を、『TKP fabbit』ブランドで月貸しします。レンタルオフィス単体では儲かりませんが、同じ施設を時間貸し、月貸しの二役で使えばコストをかけずに多くのお客様を取り込めます。実はTKPも月貸しのサービスをやっていますが、世間にそのイメージがない。fabbitの名前を使うことでリブランディングできると期待しています」

今回資本提携したほか4社もそのまま同じことをやるつもりはなく、それぞれに再編・再生の絵図がある。それらがすべて成功するとは限らないが、仮に頓挫しても意に介さないに違いない。転ぶたびに大きくなる自信があるからこそ、河野は前のめりに走り続けるのだ。


かわの・たかてる◎大分県出身。1996年に慶應義塾大学商学部を卒業後、伊藤忠商事為替証券部を経て、日本オンライン証券(現三菱UFJ eスマート証券)設立に参画。イーバンク銀行(現楽天銀行)執行役員を歴任。2005年TKPを設立、代表取締役社長就任。現在に至る。

文=村上 敬 写真=苅部太郎

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