サイエンス

2025.05.28 15:00

羽毛の生えた恐竜、15世紀まで存在した「最大の鳥類」ジャイアントモア

ニュージーランドの南島に生息していたサウスアイランドジャイアントモア(Florilegius/Universal Images Group via Getty Images)

その後、外界と隔絶されてからは、モアの先祖は特異な環境に直面した。当時のニュージーランドには、数種のコウモリを除いて、在来の陸棲哺乳類が存在しなかった。そのため、世界の他の地域では陸上に暮らす哺乳類によって占められることが多い生態学的役割を、鳥類が占めることが可能になった。

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大型の捕食者がいない環境では、体が大きいことはハンデではなく、むしろ有利に働く。

時間の経過とともに、モアの一部の種は、まさに巨大鳥へと進化していった。サウスアイランドジャイアントモアは、草原や、樹木に覆われた渓谷を闊歩し、シダや灌木、高いところの枝に生えている葉などの、堅い植物を食べて暮らした──他の動物はほとんど届かない場所の食料源を食べることができたからだ。モアは長い脚と、柔軟な首を持つため、さまざまな高さにある植物を食べることができた。この点では現生動物のキリンに近いといえる。

成体のモアの天敵として知られているのはハーストイーグルのみだ。こちらもニュージーランドの在来生物で、史上最大級の猛禽類とされる。それでも、成体のモアはそう簡単に倒せる相手ではなかったはずだ。

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ジャイアントモアと人(Shutterstock.com)
ジャイアントモアの骨格とマオリ人(Shutterstock.com)

ジャイアントモアの命運が決したのは、人類がこの島にやってきた時だった。具体的には、13世紀末に訪れたマオリの人々だ。ジャイアントモアたちは、人を恐れず、進化の過程で狩猟の脅威から身を守る形質も身につけていなかったことから、乱獲と生息環境の破壊の強い圧力を受け、個体数が急速に減少していった。人類の到着からわずか数世紀で、サウスアイランドジャイアントモアを含め、モア目に属する9種はすべて絶滅した。

(余談:ジャイアントモアが絶滅に追い込まれた際に、私たち人間が一定の役割を演じていたことは非常に痛ましい話だが、人間が引き起こした絶滅の中でおそらく最も嘆かわしい事例は、ファッションのために特定の種が狩られ、壊滅状態に追いやられたケースだろう。こうしたファッション界のトレンドは、タイタニック号とともに沈んだ積み荷の中で、最も価値が高かったものとも関係している。詳細についてはこちら

モアが特に人の好奇心をそそるのは、その大きさだけでない。私たちが「鳥らしい」形質として考えがちな要素から、彼らがあまりにもかけ離れた存在だからだ。モアは翼を持たず、飛ぶことができず、生態系においては、羽の生えた鳥よりも、むしろ草食の哺乳類に近い位置を占めていた。

多くの意味でモアは、現生鳥類より「羽毛の生えた恐竜」の方に近い生物であり、太古の息吹を伝える進化的残響なのだ。

現在では、ジャイアントモアのレガシーは、化石化した骨や、マオリの人々のあいだに口伝で伝わる物語の中に息づいている。

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翻訳=長谷睦/ガリレオ

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