サイエンス

2025.05.28 15:00

羽毛の生えた恐竜、15世紀まで存在した「最大の鳥類」ジャイアントモア

ニュージーランドの南島に生息していたサウスアイランドジャイアントモア(Florilegius/Universal Images Group via Getty Images)

ニュージーランドの南島に生息していたサウスアイランドジャイアントモア(Florilegius/Universal Images Group via Getty Images)

鳥類について考える時、たいていの人は即座に大空に思いを馳せるだろう。

だが、すべての鳥が空を飛ぶわけではない。

その一例が、コウテイペンギンだ。科学者の推定によると、コウテイペンギンは約6000万年前に空を飛ぶ能力を失ったとみられている。その理由は単純明快で、空を自在に飛ぶよりも、流線型で泳ぎの名手になる方向に、進化がこの種を後押ししたからだ。

進化の過程で、多くの鳥が、空を飛ぶ能力と引き換えにして、周囲の環境が突きつける課題に最適化した体格を手に入れてきた。

例えばダチョウは、空を飛ぶ能力を失った代わりに、体格を大きくすることができた(もちろん、体重が重くなればなるほど、空を飛ぶのは難しくなる)。こちらの進化の道筋に向かったことで、アフリカの平原の開けた地形に適応した、大型で地上を棲み家とする種が生まれた。

そして、ダチョウは空を飛ぶ能力を手放したものの、長い脚をもつ俊足のランナーとなることで、その埋め合わせをしている(ダチョウは最速で時速約64kmで走ることが知られている)。

鳥が空を飛ぶ能力を手放すのは、以下に挙げる2つの理由のうちいずれかのケースが多い。すなわち、泳ぎの能力を向上させるため(コウテイペンギンの場合)か、体のサイズを大きくするため(ダチョウの場合)だ。

ゆえに、史上最大の鳥を探す場合には、飛べない鳥の仲間を探すのが理に適っていると言えるだろう。

実際、最大の鳥は、まさにそのカテゴリーで見つかっている。具体的には、ニュージーランドの南島に生息していたサウスアイランドジャイアントモア(学名:Dinornis robustus)だ。では、この鳥の誕生から絶滅までの、進化の物語をひもといてみよう。

サウスアイランドジャイアントモア──世界で最も背が高い鳥の生態

飛べない鳥は、進化の歴史のさまざまな時点で、世界各地で誕生してきた。だが、体の大きさに限った話で言えば、サウスアイランドジャイアントモアに匹敵する鳥はまずいない。

長い首をまっすぐ伸ばした時には、その体高は12~13フィート(約3.65~3.96m)におよび、体重も最も重い個体では600ポンド(約270kg)に達した。この巨大な草食の鳥は、西暦1450年ごろに絶滅するまで、ニュージーランドの森林地帯に君臨していた。

空を飛ぶことの役には立たないが、目に見える形で翼が残っているダチョウやエミューと違い、モアの翼は完全に退化していた。過去に先祖が空を飛んでいたことを示す、翼の骨の痕跡さえ存在していなかった。この特徴から、モアは現在知られている中では唯一の、「完全に翼のない形態」に進化した鳥となっている。

モアの進化の旅は数千万年前、先祖にあたる鳥がニュージーランドにやってきた時に始まった。先祖たちは、ニュージーランドが南半球の大陸とまだ近い位置にあった時に、空を飛んで、あるいは何かに乗って流れ着いたとみられる。

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翻訳=長谷睦/ガリレオ

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