海外

2025.05.28 10:00

病院内データと複雑化する技術インフラを統合するInnovaccerの挑戦

T. Schneider / Shutterstock.com

当時勤めていた会社のCEOに、新会社設立を提案

フォーブスの「30 Under 30」2017年版に選出されたシャシャンクは、インド工科大学カラグプル校で機械工学を学んだ後に、インドの産業用機械大手Ingersoll Rand(インガソール・ランド)に入社。スマートホームの管理ソフトの開発に従事した際に、同様の技術を他の産業にも応用できるのではないかと考え、当時のCEOに新会社設立を提案したという。

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2014年冬にシャシャンクは、インガソール・ランドから350万ドル(約5億円)のシード資金を得て、会社を設立した。当初は、企業向けのデータ分析プラットフォームとして始動したイノベーサーは、ディズニーやNASAを初期の顧客としていた。

既存事業をすべて閉じ、医療分野に専念することを決断

シャシャンクはその後、医療機関との接点を持つようになり医療現場のデータの断片化がいかに深刻であるかを知った。そして2016年に2000万ドル(約28億円)を調達した後に、既存事業をすべて閉じ、医療分野に専念することを決断した。「投資家たちは『君たちに信念があるなら支援する』とは言ってくれたが、きっと内心であわてていたと思う」と、シャシャンクは当時を振り返る。

これは大きな賭けだったが、その賭けは成功した。シャシャンクと共同創業者たちは、米国の医療制度を深く理解するために、アイオワ州デモインのマーシー・メディカル・センターに4カ月以上滞在し、質問を重ねた。現場で目にしたのは、医療データと優れた分析ツールへのアクセスに関して、医師たちが一本化を切望していることだった。彼らはそのニーズに応えるソフトウェアの開発に着手し、患者の管理や保険サポート、医師向けの分析ソリューションを展開していった。

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年間ベースで約284億円近くの契約をすでに締結

イノベーサーは、ごく数人の営業担当者しか抱えていなかっが、同社のソリューションの評判は、アイオワの病院からネブラスカやテキサス、カリフォルニアの医療機関へと広がっていった。同社はその後、複数の医療分野大手と契約を結び、今では全米トップ10の医療システムのうち7機関を含む、200以上の顧客を抱えるまでに成長した。

1月のイノベーサーの調達に参加したダナハー・ベンチャーズのムラリ・ヴェンカテサンは、シャシャンクのエンジニアリング分野での経歴が同社の強みになっていると語る。イノベーサーの製品は、Epicなどの電子カルテシステムや他社のデータ取り込みにも対応しているため、横断的な検索がしやすい点もメリットだと彼は指摘した。

イノベーサーは、現時点で年間ベースで2億ドル(約284億円)近くの契約をすでに締結しているが、シャシャンクはその額を年内に2億3000万ドル(約327億円)から2億5000万ドル(約355億円)に到達させようとしている(同社は財務の詳細を開示していない)。「創業当初は、収益が1000万ドル(約14億円)に届けば王様になれると思っていた」と彼は笑いながら語った。

プラットフォームを外部に開放して、病院が自ら開発したアプリも動作可能に

イノベーサーは、昨年からGravityのAI対応ソフトウェアの開発に着手した。その背景には、医師向けの記録支援アプリなどAIツールの普及が進む中、医療現場が増えすぎたデータの対応に追われていることが挙げられるとシャシャンクは説明した。

彼は今後、事前承認の自動化から術後ケアまでさまざまなテクノロジーをGravityに組み込むことを目指している。またすべてを自社開発するのではなく、プラットフォームを外部に開放して、病院が自ら開発したアプリも動作可能にする計画だ。

米国医師会が発行するJAMA誌の推計によれば、米国ヘルスケア分野の無駄なコストは2019年時点で年間9350億ドル(約133兆円)に達しており、シャシャンクは、こうした無駄を削減するためにも、この分野の技術的基盤の修復が不可欠だと考えている。「ヘルスケア業界は、AIに1兆ドル(約142兆円)の無駄を削減させる役割を任せるべきだ。私はそれが可能だと考えている」と彼は語った。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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