ChatGPTなどの生成AIが一般にも広く使われるようになった。通常は「あれについて教えて」とか「こういうときにどうしたらいい?」という問いかけ(プロンプト)が多いが、それでは生成AIの本当の力を引き出せていないという。
「組織行動科学」や「人的資本開発アシスタント」による組織開発事業などを展開するリクエストは、組織における生成AIの本質に関するレポートを公開し、そのなかで、生成AIの本当の能力を引き出す7段階の問いを提案している。そこで重要になるのが、生成AI時代に求められる人間の役割の再認識だ。
組織における生成AIは、単に正解を求めるものではなく、顧客、同僚、社会などの相手にとって意味のある「効果」作りのための素材を提案する装置だとリクエストは考えている。「効果」とは、「相手の善さを引き出し、信頼を育むプロセス」であり、「問い返しにより相手の背景や意図を捉えて共創の場を作り出すこと」だと同社は定義している。生成AIは、あくまでその工程を効率化してくれるものだ。
「効果」を引き出すのに必要になるのが「問いの深さ」だ。人間の思考は問いによって深まるという。生成AIに対しても、提示された回答(仮説)を何度も問い返し議論を深め、価値ある提案を引き出すことが重要になる。その問い直しのプロセスを可視化したものが、「問いの深さ7段階モデル」だ。
問いの深さ7段階モデル
レベル | 名称 | 人間の問いの特徴 |
Lv.1 | 指示処理 | 「どうやればいい?」 「正しい方法は?」 |
Lv.2 | 表層理解 | 「なんでこのやり方?」 「ムダが多くないか?」 |
Lv.3 | 問題意識 | 「どこにギャップがある?」 「なぜこの仕組みか?」 |
Lv.4 | 関係洞察 | 「相手は何を見ている?」 「何に困っている?」 |
Lv.5 | 善さの設計 | 「どう伝えたら伝わる?」 「支援になるには?」 |
Lv.6 | 再現と翻訳 | 「どう残す?」 「誰でもできるようにするには?」 |
Lv.7 | 意義の継承 | 「この問いをどう未来のメンバーに渡す?」 |
生成AIの問いのレベルを深めるには、人間の側にも相応の能力が必要になる。リクエストは、次の4つの力を育てることが求められると話す。
1. 身体で事実を確認・経験する力: 言葉にならない現場の違和感から仮説を立てる。
2. 最適を共に探る対話力: 相手と一緒に「お互いにとってより善い状態」を設計する。
3. 問題を共に乗り越える姿勢: 葛藤や行き違い、誤解を対話と実行で乗り越える力。
4. みえない構造を共視する力: 関与者の関係性や価値観を図解・可視化し共有する。
生成AIは人間のためにある。人間の社会をよりよくするための道具だ。それを使い熟すためには、人間自身も成長しなければいけないということだろう。
リクエストの詳しいレポートは『生成 AI 時代における「思考の深まり」と信頼の再定義』を見てほしい。



