経営・戦略

2025.05.26 12:00

世界最強の「親の七光り」で稼ぐ「トランプの息子」らのMAGA経済圏

2025年4月28日、ドバイのトランプ・インターナショナル・ホテル&タワーの開業式に出席したドナルド・トランプ米大統領の息子、エリック・トランプ(Photo by Nicolas Briquet/SOPA Images/LightRocket via Getty Images)

2025年4月28日、ドバイのトランプ・インターナショナル・ホテル&タワーの開業式に出席したドナルド・トランプ米大統領の息子、エリック・トランプ(Photo by Nicolas Briquet/SOPA Images/LightRocket via Getty Images)

トランプ米大統領の「トランプ・オーガニゼーション」で取締役副社長を務める大統領の次男のエリック・トランプ(41)は、5月初旬、ドバイで80階建ての「トランプタワー」を建設すると発表した。この建物は「中東湾岸地域で最高のホテル」となり、「あらゆる記録を打ち破る」と彼は宣言した。

現地で開かれた暗号資産のカンファレンス「Token 2049」に登壇したエリックは、この物件の購入者は暗号資産による支払いが可能で、「デジタル革命」に参加できると語った。

このような計画のすべては、誇大宣伝をビジネスと政治の両方に持ち込んだ大統領の後継者たちにとっては、良いニュースだ。そして彼らは今、「暗号資産」という世界でもっとも誇大宣伝が横行する業界で、その力を発揮し、実際に利益を生んでいる。

エリックとその兄のドナルド・トランプ・ジュニア(47)は、父親が2期目の大統領に就任する以前に、それぞれ推定5000万ドル(約71億円。1ドル=142円換算)の資産を保有していたが、ここ最近の父の暗号資産関連の事業から追加で2000万ドル(約28億円)ずつを得た可能性があるとフォーブスは試算している。彼らはまた、データセンターや銃器、ドローン、さらには首都ワシントンでのプライベートクラブなど、政権との近さを収益機会に活かせる分野にも進出している。

この動きは、トランプの息子たちにとって「表舞台への浮上」ともいえる。彼らは、トランプの1期目の政権が始まった2017年から、実質的に父の不動産事業を率いていたものの、トランプが大統領就任時に公言した倫理規定によって、目立たない場所に置かれていた。2018年にインドを訪れ高級分譲マンションを販売していたジュニアは、CNBCの取材に対し「私たちは、あれこれと自らに制限を課したのに、感謝もされず、何の評価も得られていない」と不満を漏らしていた。

彼はその後の数年で政治のマネタイズに傾倒するようになり、MAGA(米国第一主義)系の書籍を執筆し、保守系の出版社を立ち上げ、最終的に自らの政治的ポッドキャスト番組『Triggered』を開始した。そして今、2期目のトランプ政権においては、ビジネスと政治の間の表向きの垣根は消え去り、トランプの息子たちはかつてないほど事業に意欲を燃やしている。

トランプ一族の「暗号資産事業」

彼らが父親の暗号資産関連事業から得た収益は明確には把握できないが、おそらく最大の収益源だ。昨年の大統領選の1カ月前に設立された暗号資産企業「ワールド・リバティ・ファイナンシャル(WLF)」の開示書類には、ジュニアとエリック、そして末っ子のバロンが「Web3アンバサダー」として記載されている。この事業の「ゴールドペーパー」では、3000万ドル(約43億円)を超えた収益の75%をトランプ家が得るとされているが、家族内での分配は明記されていない。WLFのトークンの売上高は昨年11月以降に急増し、現時点で少なくとも5億5000万ドル(781億円)に達している。

過去のトランプ家の事業では、父親が収益の約80%を得て、残りを子どもたちで分けるのが通例だった。もしジュニアとエリックがそれぞれ7%を受け取ったとすれば、彼らはそれぞれ1800万ドル(約26億円)を得た計算になる。また、1月に立ち上げられたトランプのミームコイン「$TRUMP」の収益からも、同様な分配で、それぞれ800万ドル(約11億円)程度を得ていた可能性がある。トランプ・オーガニゼーションはコメント要請に応じなかった。

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編集=上田裕資

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