製造業界のM&A 100年に1度の大変革が起こる

垂直統制型とモジュール型

藤吉:素朴な質問なんですが、こういう会社をどうやって見つけてくるんですか?

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水谷:我々は上場企業のリサーチを35年以上やっているので良い企業を探すのは得意です。非公開企業も今は帝国データバンクなど、情報はある程度取得できますので、基礎的なリサーチは可能です。

藤吉:ちょうど今、我々の雑誌で「M&A」の特集をやってまして(特集・未来は買える The Smart Buyers 「Forbes JAPAN」7月号)。

買収というとアメリカなんかでは新オーナーが乗り込んでいくイメージがまだ根強かったり、あるいは売り手は多いものの買い手を探すのが難しいなかで、昔の「地方豪族」の新種で、買収する体力がある会社が「ストロングバイヤー」と呼ばれたりしています。

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そうしたなかで、新たな言葉をつくろうと思いました。本業を強力にするだけでなく、地域の発展や業界の再編を担う、ある種の理想や理念をもって企業の統合を行っている会社を「スマートバイヤー」と名づけて、ピックアップしているのです。

ただ、誰もが直面するのは、旧来型のハゲタカのイメージが残っていることです。例えばスパークスさんが新オーナーとして買収した会社に入っていったとき、旧経営陣の反発があったり、それを説得したりという場面はあるんでしょうか。

水谷:説得というのは、あまりしないですね。我々が出資する前に、同じ方向を向けるか時間をかけて議論をしています。議決権の過半数を持つとはいえ、出資後に株主と経営陣が大方針をめぐって対立するのは健全だとは思いません。

シンニッタンの場合であれば、我々としては「本業に関係ない不動産や有価証券は処分して、モノづくりに集中しましょう」と最初から経営陣には話していて、それに対して「それでいいです。モノづくりで生き残りたい」ということでしたので、では一緒にやりましょうとなりました。

藤吉:製造業のM&Aの場合、ゴールを共有できていると同じ船に乗りやすいと思うんです。最近のM&Aの事例を見ていると、例えば建設会社が幼稚園とか介護施設を買収して、「まちづくり」をやるんだという大きなゴールを設定していることも増えてきましたが、一方で製造業の現場の人はやっぱり「モノづくり」へのこだわりが最優先で、その先の大きなゴールのことは考えていなかったりもしますよね。

水谷:日本の製造業、とくに自動車だと、どうしても系列の中で仕事することが多くあります。完成車メーカーからの発注をこなしていけば、とりあえずやっていけた。ただそういう会社の中には規模が小さくて投資余力もない会社が少なくないわけです。

一方で欧米に目を移せば、M&Aによって小規模な部品メーカーが淘汰され、メガサプライヤーに再編されている。日本の小さな部品メーカーがそのメガサプライヤーと戦っていかなきゃいけないわけです。ですから理想のゴールというよりも、どうやって生きていくんですか、という足元の危機感の方が切実ですね。

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text by Hidenori Ito/ photograph by Kei Onaka

連載

市場の波に乗る12の視点 スパークス代表・阿部修平×Forbes JAPAN 編集長・藤吉雅春

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