なぜ「カイゼン」は楽しいのか 「日本の製造業」成長シナリオ

なぜ「カイゼン」は楽しいのか

藤吉:私がトヨタの工場で印象的だったのは、セルと呼ばれる「コ」の字型の作業台の中で、身長150㎝に満たない小柄な女性が1人で自由自在という感じで機械を操作していたんですよね。

advertisement

阿部:トヨタ用語でいう「からくり」ですね。人が機械に合わせるんじゃなくて、人に合わせて機械の方をアレンジする。背が低くても、力がなくても誰でも活躍できるような環境を整える工夫を惜しまないわけです。

日本の同じ業種の製造業だけど、そこまで違う。トヨタでは今でも毎日毎日、目安箱に現場からの「カイゼン」が上がってくる。それを35万人が進んでやるのはなぜか、という話なんですよね。やっぱり「カイゼン」するのを楽しみにしているのかもしれないですね。「カイゼン」するとその分、作業も楽になるわけですから。

水谷:トヨタの人に聞くとやっぱり楽しいそうです。その根底にあるのは、「改善後は改善前」という言葉があるように、今のやり方は常に完璧ではない、という思想じゃないですかね。

advertisement

藤吉:IJTTについては、そういう「カイゼン」を積み重ねたうえで、具体的にはどういう成長戦略を思い描いておられるんですか? 

水谷:具体的には、産業用ロボット向けの鋳物部品への進出ですね。これはIJTTの鋳造技術が生かせる領域で、既に国内のメーカーともお取引がありますが、今後のさらなる需要拡大を見越して、岩手県北上に約300億円を投じ、専用の新工場を建設しています。

”いすゞ1本足”のポートフォリオを少しずつ変えながら、新たな成長をとっていきたいと考えております。

藤吉:なるほど。阿部さんはIJTTの買収にどういう意義を見出されているんですか?

阿部:大前提として、僕はやっぱり日本の高品質なエンジンというのは電気自動車の時代になっても残っていくと思っているんですね。

とくに鋳造・鍛造という極めてアナログ、かつ高精度が要求される技術を日本に残していかなければならない使命感がある。そのためにIJTTをもっと強い会社にして再上場するということを目指しているわけです。

 

 

水谷光太 スパークス・アセット・マネジメント企業投資本部長

2016年入社。2020年からプライベートエクイティ(バイアウト)投資の運用業務および投資先のバリューアップに従事。それ以前は、主に上場株式の運用チームにて、投資先企業へ変革を促すエンゲージメント戦略を担当。企業経営者との継続的な対話に加え、バランスシートの改善や社外取締役選任にむけた株主提案活動などを主導。慶應義塾大学商学部卒業、英マンチェスター大学経済研究科修士課程修了。

text by Hidenori Ito/ photograph by Kei Onaka

連載

市場の波に乗る12の視点 スパークス代表・阿部修平×Forbes JAPAN 編集長・藤吉雅春

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事