技術面では私たちのネットワークのなかからLaboro.AIと組んで、AI技術を活用した鋳造の品質向上プロジェクトを進めています。鋳造というのは、鉄を溶かして型に流し込んで成型する技術で、変数が多く、高品質な製品を製造するためには現場の鋳造技術者の経験や勘が重要となります。そこにデータ分析やAI技術を導入する事で、勘やコツの部分を定量化し、品質の向上と技術継承を補助する狙いがあります。
他にも、トヨタの生産調査部の方にご協力いただいて、TPSの「モノと情報の流れ図(モノジョウ)」と呼ばれる改善ツールを導入し、工場のどこに改善ポイントがあるのかを現場の若手と一緒に洗い出しています。こうすることで、自走で現場での改善を指導できる人材を社内に増やしていく狙いがあります。
藤吉:そういう指摘を受けると現場はガラっと変わるものなんですか?
水谷:私の経験でいうと、日本のモノづくりの会社はやっぱりプライドがあるんですよね。だから我々がトヨタの人と行って「こうすれば改善できますよ」と言っても、「結構です。間に合ってます」という反応も珍しくはありません。
一方で現場の人たちは「来てくれてありがとう」という感じでめちゃくちゃ喜ぶんです。IJTTでも、事前に自分で「TPS(トヨタ生産方式)の勉強してきました」という若い人がいました。
藤吉:私もトヨタの工場にTPSの見学に行ったことがありますが、極端にいうと手品を見ているような感じがするんですよね。動きに無駄がなく、一つひとつの作業が美しい。
水谷:そうですね。ただTPSのカイゼンでやってることって、特別なことではないように感じることもあります。簡単な例えで言うと、工場の中でどの在庫や部品をどこに置くかというときに、先に使うモノを手前に置いておく。
そうすれば探す手間が省けますよね、というレベルの話なんですが、じゃあトヨタ以外の会社の工場でこれができているかといえば、できてない。毎回奥まで部品を探しに行って、時間をロスしていることに意外と気付いてないんです。
藤吉:小さい習慣の積み重ねが全体を変えてしまう。
水谷:整理整頓するための前提として、トヨタの場合は、工場を明るくするとか、ペンキを塗り直すところから始めるんですね。そこを徹底して「やり切る力」が違う。
阿部:トヨタの工場ってどこに行っても、この床で寝ても平気、というぐらいきれいなんです。その当たり前のことを35万人以上のグループ社員全体に徹底させているところがすごい。
なぜトヨタはそれができるのか━━これは経営学の最大のテーマだと思うけど、学者で研究している人はほとんどいないんですよね。


