シリコンバレーの企業幹部の政治的な考え方はまちまちだが、ひとつだけ一致していることがある。それは、人工知能(AI)は善にも悪にも利用できる強力な技術であり、何らかの規制が必要だということだ。
現在の予算調整法案は、向こう10年間、連邦政府と州政府によるAI規制を禁止するものだ。この法案が成立すれば、米国のAI規制のあり方が根本的に変わり、技術革新や公共の安全、公民権、ひいては世界的な競争のバランスに重大な影響を及ぼすことになるだろう。予算調整法案をAI政策の手段として使おうというこの動きは、陰謀や警戒を呼び起こした。予算措置が単純多数決で可決されるこの手続き手段を活用することで、提案された文言は、AI技術に関する連邦または州の規制を事実上10年間停止することになる。
推進派はこれを、米国がAIによる技術革新の最前線に立ち続けるための大胆な一歩だと位置付け、官僚的な摩擦を取り除き、開発者に成長に向けた明確な道筋を与えるとしている。だが、そこには盲点があると批判する声もある。規制上のガードレールがなければアルゴリズムの偏りに歯止めがかからず、データの悪用やAIによる誤情報の拡散につながる恐れもある。
米CNNによると、コーネル大学やジョージタウン大学をはじめとする学術機関のほか、南部貧困法律センターや経済政策研究所などの団体を含む141の組織が予算委員会への書簡に署名し、同法案への反対を表明した。グーグルを傘下に持つアルファベットの労働組合や「環境正義を求めるアマゾン従業員」などの労働者団体も同書簡に署名し、AI開発の将来に対する懸念がいかに広く共有されているかが浮き彫りになった。
書簡を起草した米非営利団体デマンドプログレスのエミリー・ピーターソンカシンは、同法案は「私たちの生活のあらゆる場面に『未完成で責任のないAI』が強制的に導入される社会にすべてを賭けている、大手テクノロジー企業の最高経営責任者(CEO)への危険な贈り物だ」と警告。「ジョンソン下院議長とジェフリーズ院内総務は、大手テクノロジー企業の選挙資金だけでなく、米国民の声に耳を傾けるべきだ」と訴えた。
技術革新を起こそうという意図は称賛に値するが、このような急速な技術進化の過程で監視が欠如していることは深刻な懸念事項でもある。AIは単なる生産性の道具ではなく、経済や社会、さらには民主主義の一連の過程を形成する力なのだ。規制のない10年間は、私たちのデジタルの未来の根幹に予期せぬ結果をもたらすかもしれない。


