中国の今年1〜3月の5.4%という国内総生産(GDP)成長率は目を見張るものだが、額面どおりには受け取りにくいところもある。
中国の中央銀行である中国人民銀行は20日、主要な貸出金利を0.1ポイント引き下げた。最優遇貸出金利(ローンプライムレート、LPR)の1年物を3.1%から3.0%に、5年物を3.6%から3.5%にそれぞれ下げた。
これは大きな動きではないものの、ドナルド・トランプ米大統領による貿易戦争が中国の経済信頼感にじわじわ打撃を与えるなかで象徴的な動きだった。
たしかに、トランプの関税はこれまでのところ、アジア最大の経済大国をホワイトハウスが望んでいたような形で組み伏せるにはいたっていない。中国経済は第1四半期に2025年の目標の「5%前後」を上回る成長を記録し、対する米経済は同期に0.3%縮小した(編集注:中国の成長率は前年同期との比較、米国は前期比の伸び率を年率換算したもの)。
だが、前日の19日に発表された中国の統計は、経済の不確実性が高いコストをもたらしつつある兆候をはっきり示していた。そのコストがだんだんと大きくなっていく兆しもある。小売売上高、固定資産投資、不動産価格、鉱工業生産といったデータが軒並み軟化しており、半年後に関税がどうなっているのかわからないという先行きの不透明さが、中国の経済活動を冷え込ませつつある状況が浮かび上がった。
トランプがひとまず、中国に対する145%の関税を30%に引き下げたのは喜ばしいことである。とはいえ、ここには2つの注意点がある。
1つ目は、2国間の貿易交渉で中国の習近平国家主席がトランプに多くの譲歩を示さない限り、この小康状態は長く続かない可能性があるということだ。多くの中国ウォッチャーは、習がそうする可能性はかなり低いとみている。トランプワールドから強硬な発言が続いているだけに、習は米国に屈したと受け止められるわけにはいかないのだ。
2つ目は、対中関税が一時的に30%に引き下げられたとはいっても、これでもまだ、1930年代に世界恐慌を深刻化させた「スムート・ホーリー関税法」の水準に近い高さだということだ。115ポイントの関税引き下げは正しい方向への一歩だとはいえ、深刻な「持病」を抱えたままトランプ2.0時代に突入した中国経済にとっては、依然として相当な逆風だ。



