このとき、ショーの会場には、こうつづられたネオンサインが掲げられた。
「このショーは、愛するきょうだい、ジャンニの仕事への愛と、すべてのスタッフに捧げるものです。信じがたいほどの皆さんの愛と献身は、私たちのきょうだいにとって、本当にかけがえのないものでした。そして、それは私たちにとっても非常に大きな意味を持っています。スタッフの皆さん一人ひとりに、感謝しています」
ショーの客席には、ダナ・キャランやジョルジオ・アルマーニ、アンジェラ・ミッソーニ、ミウッチャ・プラダ、そしてジャンニが「わが師」と呼んでいた故カール・ラガーフェルドなど、ヴェルサーチェをサポートしようとする多くのデザイナーたちの姿があった。
迎えた「ドナテラの時代」
ドナテラが手がけたオートクチュール・コレクションは、兄の死から1年と3日後、それまでヴェルサーチェが使用してきたのとは別の会場、パリのリッツ・ホテルのプールに設置されたガラスのキャットウォークで初披露された。オートクチュール・ショーでは最後にウェディングドレスが紹介されるのが通例だが、このとき、花嫁姿のモデルは登場しなかった。
デザイナーとしてのドナテラのキャリアのハイライトとなったもの一つには、2000年のグラミー賞授賞式でジェニファー・ロペスが着た「ジャングルドレス」がある。あまりにも多くの人がこの露出度の高いグリーンのドレスについて検索したことで、Googleのサイトがクラッシュ。それが、同社が画像検索機能を開発するきっかけになった。
2020年春夏コレクション・ショーには、この出来事からちょうど20年となったことを記念して、よく似たドレスをまとったロペスが登場。ショーの最後には、ドナテラと手をつないでランウェイを歩いた。
また、ブランドの責任者としてのドナテラにとってのもう一つの大きな出来事は、兄ジャンニの没後20周年を記念するイベントでもあった2018年の春夏コレクション・ショーだった。ミラノにある博物館、トリエンナーレ・ミラノで開催され、ファッション史において最も象徴的なショーの一つになったと評されている。
ドナテラはこのショーで、慣習を打破してきたジャンニの勇気と大胆さ、そして女性たちに力を与えることへの情熱を表現。兄のアーカイブを参考に、ロココ調のプリントや、1992年秋冬コレクションで発表されたルックからインスピレーションを得たデザインを披露した。
中でも特に注目されたのは、1992年秋冬コレクションでナオミ・キャンベルが着用した白と黒のスカートだった。あまりにも手の込んだ作りだったためにレプリカの制作が間に合わず、ジャンニの作品を再度、そのまま披露することとなり、ナターシャ・ポーリーが着用した。


