香港の「新世代のカジノ王」として知られるローレンス・ホー(49)のファミリーオフィスであるBlack Spade Capita(ブラック・スペード・キャピタル)が、同じく香港拠点の不動産仲介会社IFCXに非公開の金額を出資した。
元モルガン・スタンレーのキングストン・ライが2014年に設立したIFCXは、不動産や高級ワイン、美術品などのオルタナティブアセット(代替資産)への投資を行う機関投資家を支援している。同社はまた、カンボジアやマレーシア、中東、タイ、英国、ベトナムの不動産開発業者のマーケティング・販売を支援し、彼らの顧客向けに不動産管理サービスを提供している。
IFCXは5月20日の声明で、ブラック・スペード・キャピタルからの支援を受けて、より多くのアジアの富裕層やホスピタリティ関連およびエンタメ分野に事業を拡大していくと述べた。同社はまた、市場予測や人工知能(AI)関連のツールの提供などにも進出するという。
「ブラック・スペードからの支援を受けて、当社は、グローバルの不動産取引を再定義し、機関投資家と個人投資家の双方を支援していく」とIFCXのCEOのライは述べている。
ブラック・スペードのプレジデントでCEOのデニス・タムは、IFCXが新興国市場におけるプレゼンスを確立している点を評価して出資を行ったと語っている。「こうした市場は、当社のアジア各国の統合型リゾート事業(IR)との相乗効果が見込める成長エンジンだ」と明かした。
マカオを拠点にカジノを含むIRを開発、所有、運営する「メルコリゾーツ&エンターテインメント」の会長でCEOを務めるホーは、他にも複数の投資を手掛けている。彼が立ち上げた特別買収目的会社(SPAC)の「ブラック・スペード・アクイジション」は、2023年8月にベトナムの電気自動車(EV)メーカーであるビンファストと合併し、同社を米ニューヨーク証券取引所に上場させた。この合併におけるビンファストの評価額は230億ドル(約3.3兆円)とされていた。
「マカオのカジノ王」として知られた故スタンレー・ホーの息子であるローレンス・ホーは、中国当局の規制強化を受けて、カジノ事業を海外に広げており、今年1月には、今後のカジノの合法化が期待されるタイにおいて、IRの営業ライセンスの取得を目指すと発表した。
フィリピンのマニラやキプロスでもIRを運営するメルコは、今年中にスリランカでもカジノの開業を予定している。同社は、日本でも横浜市のIR事業への参入に意欲を示していたが、反対派の市長が当選したことで先行きが見通せず計画を断念したと報じられた。