JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOは5月22日、米国経済が依然としてスタグフレーションのリスクを抱えていると警告した。彼はその背景に、世界貿易の再編や地政学的リスクに対応するための再軍備化といった要因があると指摘。連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを見送り「様子見」の姿勢をとることが適切な判断だと語った。
彼のこの発言は、JPモルガンが上海で開催した「グローバル・チャイナ・サミット」の会場でのものだ。ブルームバーグの取材に応じたダイモンは、「私は、スタグフレーションのリスクがあると考えている」と語ったものの、それが必ず起こるとは考えていない点を強調した。
ダイモンCEOは、世界規模の財政赤字や再軍備化の動き、グローバル貿易の再編といった動きがすべてインフレを誘発し得ると語った。「私は今の米国経済が理想的な状況だとは思わない。現状はうまく行っているが、だからといってこの先も良い状況が続くとは限らない」と彼は指摘した。
同CEOはまた、FRBが利上げについて様子見の姿勢をとっているのは、「正しい判断だと思う」と語った。
一方、共和党とトランプ大統領が支持する新たな税制法案が、財政赤字をさらに拡大する懸念があることを問われたダイモンCEOは、この措置が赤字を「少し上乗せすることになるだろう」としつつも、「それでも税制の方向性が明確になることの方が重要だ」と語った。
ここ最近のドルの下落について尋ねられた彼は、「私は、短期的な変動をさほど懸念していないが、人々がドルの持ち分を減らす動きがあるのも理解できる」と語った。
「スタグフレーション」の懸念
スタグフレーションとは、経済成長の停滞と物価の上昇が同時に起こる、伝統的な経済モデルに逆行する現象を意味する。この現象が厄介なのは、従来の政策手段では対処が難しい点にある。インフレの抑制策をとれば経済減速が悪化し、景気刺激策をとればインフレが加速する可能性があるからだ。
FRBのジェローム・パウエル議長は先月、トランプ大統領の関税政策が、米国にスタグフレーションをもたらす恐れがあると警告した。シカゴ経済クラブでの講演でパウエル議長は、トランプ政権が進める関税が、「インフレの抑制と雇用の維持という、ふたつの政策目標が対立する困難な局面を招く可能性がある」と述べていた。
米中貿易摩擦の中、JPモルガンが中国への投資を続ける理由
一方、米中間の貿易摩擦が続き、競合の金融大手が中国事業の縮小を進める中においてもJPモルガンが中国への投資を続けている理由について問われたダイモンCEOは、「当社は、長期的な観点から投資を行っている」と発言した。彼は、「貿易交渉の影響で多少の調整はあるにせよ、企業が中国でビジネスを続けていくというのがコンセンサスだ」とし、「米国政府も中国から撤退したいとは思っていない」と述べて、「米国は中国とのデカップリング(経済的分断)を望んでいない」というベッセント財務長官の発言に同調した。
ダイモンCEOはまた、ジュネーブで行われた最近の米中協議にも言及し、「今後もさらなる話し合いが続き、良い結果に至ることを願っている」と語った。



