「黒船」来航なきバレーボール改革
チェアマンの語り口はいつも通りひどく静かだが、変わらぬ熱を帯びていた。「バスケのリーグは、元々2つに分かれ、統合のために全く新しいリーグを立ち上げる必要があったわけです。人も含め文字通りゼロからのスタート。Bリーグという新組織に人材を集め、営業や放送・配信といった事業面を拡張していく新規事業。一方、SVリーグは、既存のVリーグを運営しながら、新リーグを創設しなければなりません。私自身が本格的に関わるようになったのは、2024年の7月、開幕直前でした。それまでは大学の業務が中心、割ける時間はごくわずか。そのため立ち上げは、苦しいスタートだったと言わざるを得ません。もちろん、関係者の皆さんは尽力してくださいましたが、バスケのように開幕まで1年半の準備期間があり、100%の力を注げた状況とは大きく異なりました。Vリーグの運営と並行しながら、私自身も兼任という形であった点も含めると、SVリーグの立ち上げは非常に難易度の高いものでした」とその労苦を振り返った。
バスケ界は、2005年から2リーグに分裂。国際バスケットボール連盟(FIBA)はこれを良しとせず国内リーグの統一を促し続けていたものの、14年ついに最終通告を突きつけた。統一がなされない限り、男子日本代表の国際試合出場資格停止という非常に厳しい内容だった。おりしも、56年ぶりに東京五輪開催が決定。つまり自国開催の五輪出場資格を失う窮地に追い込まれた。
「Bリーグの場合は、FIBAという強力な外圧、いわば『黒船』の存在がありました。制裁を回避するために2リーグの統一、JBA(日本バスケットボール協会)のガバナンス改革、男子日本代表の強化という大義名分が存在しました。錦の御旗を掲げ、それに反対する者は全て抵抗勢力という状況。これは大きな推進力となりました」。


