マーベルは、映画そのものの質に関わらず、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)のいくつか作品において、かつての栄光を取り戻せないことを受け入れなければならないと思う。
映画『サンダーボルツ*』はすばらしい作品だ。しかし、世界興行収入3億ドル(約400億円)というマイルストーンを達成したとはいえ、MCUの作品の中でも最下位付近をうろつき、現時点での興行収入は3億2500万ドル(約467億円)だ。
『インクレディブル・ハルク』をランキングに加えるかどうかにもよるが、『サンダーボルツ*』の興行収入はMCUの中で現在ワースト2位だ。少しずるい気もするが、『インクレディブル・ハルク』も考慮するとワースト3位になる。ワースト順で並び変えたランキングは以下の通りだ。
・『マーベルズ』:2億600万ドル(約296億円)
・『サンダーボルツ*』:3億2500万ドル(約467億円)
・『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』:3億7000万ドル(約532億円)
・『ブラック・ウィドウ』:3億7900万ドル(約545億円)
・『エターナルズ』:4億200万ドル(約578億円)
・『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』:4億1500万ドル(約597億円)
・『マイティ・ソー』:4億4900万ドル(約646億円)
・『アントマン&ワスプ:クアントマニア』:4億7600万ドル(約685億円)
・『アントマン』:5億1900万ドル(約746億円)
・『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』:6億4400万ドル(約926億円)
現在のペースが維持されれば、『サンダーボルツ*』は、同作にも出演する3人の俳優が役を演じる『ブラック・ウィドウ』や、MCUが軌道に乗ったばかりの頃に公開された、シリーズ初作品『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』を追い越す可能性がある。『エターナルズ』まで到達できたら驚きだ。イマン・ヴェラーニが演じるミズ・マーベルや、ブリー・ラーソンが演じるキャプテン・マーベル(彼女が主人公の『キャプテン・マーベル』は11億ドルを稼いだ)など、最高のヒーローたちが登場するワースト1位の『マーベルズ』は、実際にはかなり良い映画だ。なので、奇妙なランキングという感じがする。
ライバルのディズニー映画がいくら稼ごうと私は気にしないが、『サンダーボルツ*』のような映画が失敗することで、今後彼らが実験的な試みをしなくなってしまうのではないかと心配だ。同作品はMCUにおける「クオリティ」の新基準として掲げられているが、こうしたプロジェクトが今後も継続されるかどうかはわからない。
マーベルにとって幸いなのは、今後、良い成績が確実視される作品群の公開が続くことだ。『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』、スパイダーマンシリーズの新作、そして2本のアベンジャーズシリーズである。『デッドプール&ウルヴァリン』も公開されてからまだ日が浅い。しかし、MCUの未来はやや流動的なようで、もう11億ドル(約1600億円)を稼いだ『キャプテン・マーベル』や、興行収入6億4400万ドル(約926億円)と、マイティ・ソーシリーズとしては最悪の成績だった『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』のような作品は生まれないだろう。



