インド南部バンガロールを拠点に、同国のオンライン金融取引をリードするゼロダは、規制強化や競合との競争のなかで次の一手を探し続けている。
ニティン・カマス(45)とニキル・カマス(38)の兄弟が株式投資家向けの格安オンライン・プラットフォームZerodha(ゼロダ)を立ち上げた2010年、高額かつ不透明な手数料体系をもつインドの証券業界では変化が求められていた。高い透明性と割安な代替手段を提供することで大躍進を遂げたゼロダの社名は、「ゼロ」と「ローダ」(サンスクリット語で「障壁」の意)を組み合わせたもの。個人投資家向け売買手数料を無料とし、トレーダー向けでも極めて低額に設定したビジネスモデルは市場の常識をくつがえすもので、多くの顧客を引きつけた。
インドのバンガロールに拠点を置くゼロダは、インド国内で投資が過熱するなか驚異的スピードで成長を続け、過去10年間、売上高と純利益はともに過去最高を更新。2023年3月31日までの1年には 売上高997億ルピーに対し純利益550億ルピー(6億5400万ドル)を達成した(暫定値)。実質的クライアント数では、ライバルであるGroww(グロウ)が1230万人を擁し、800万人のゼロダをしのぐものの、売上高では、ゼロダはグロウの3倍以上に達する。
熾烈な競争とは別にゼロダは現在、一連の新規制にも対応しなければならなくなっている。株式市場を規制するインド証券取引委員会(SEBI)は24年11月、投機を抑制し投資家を保護する目的で新たな規制を導入したのだ。規制強化によりゼロダはビジネスモデルの再構築を迫られており、25年には売り上げが半減する可能性もある。創業者であるカマス兄弟は、同社の最盛期は過ぎたのかもしれないと話す。兄弟は現在、兄のニティンが最高経営責任者(CEO)としてオペレーションと戦略を統括し、弟のニキルは最高財務責任者(CFO)を務め、新しいベンチャーにもかかわっている。
「過去4年間驚異的な成長を遂げましたが、その背景には投機的な取引がありました」
昨年8月、バンガロール郊外にある本社で取材に答え、ニティンはそう語った。24年度(3月締め)決算では売上高の60%をデリバティブ取引から得た同社にとって、新規制はチャレンジとなるが、必要なものだったとニティンは認める。
米ワシントンD.C.に拠点を置く先物取引の国際的業界団体フューチャーズ・インダストリー・アソシエーション(FIA)の24年8月の報告書によると、取引量でみるとインドは世界最大の先物・オプション市場であり、2大デリバティブ取引所であるインド国立証券取引所とBSE(旧ボンベイ証券取引所)での24年第2四半期の株価指数オプションの取引量は370億近く、前年同期比で2倍となった。



