一方で、ゼロダの強力なライバルであるグロウは基盤強化を進めているようだ。バンガロールに本社 を置くグロウは、先物とオプション取引を行う顧客は15%にすぎないため、新規制の影響はさほど大きくなく、株取引を行う顧客はすでに手数料を払っていると述べている。16年創業で非上場のグロウは、ミレニアル世代や小都市の潜在的顧客層をターゲットとし、アカウントの開設や維持を無料としたことで急速に顧客を増やしてきた。
業界3位のディスカウントブローカーでムンバイに本社を置くエンジェル・ワンは、SEBIによる規制強化で先物とオプションの取引量が20-22%減少し、純利益総額は13-14%減少すると予想している。同社は11月から株取引をする顧客を対象に、これまで無料だった手数料を取引ごとに最大20ルピーまで引き上げる予定である。7-9月期には個人向け融資と定期預金のサービスを始め、保険の販売も視野に入れている。
トレーディング中毒で退学
毎日チャットで話し、連れだって休暇に出かけることもあるカマス兄弟は、中流家庭に生まれ、バンガロールの借家で育った。父は国営カナラ銀行のマネジャーで、母はインド古来の弦楽器ヴィーナを教えていた。ニティンが投資に興味をもったのは、隣人が株に手を出しているのを見た17歳のときだ。
ニティンは01年、月利4-55%で2万5000ルピーを借りると、投資にのめりこんだ。
「ほんの2、3日で全額すってしまいました。トレーディングには中毒性があって」(ニティン)
当時、バンガロール工科大学で工学を勉強していた彼は1年目で退学し、投資の原資を稼ぐためコールセンターで働き始めた。
ニキルも10年生を終えると学校をやめ、17歳のとき英国の顧客に傷害保険を販売するコールセンターに勤め始めた。
「達成目標はかなり低めに設定してやったのですが、弟は関係なく成績を残しましたね」
そう言ってニティンはニヤリと笑う。
06年、兄弟は家族や友人の資産を管理するカマス・アソシエイツを立ち上げた。並行してニティンは、ビリオネアのアニル・アンバニがかつて経営していた金融サービスの一部で今はなき株式仲介会社リライアンス・マネーのフランチャイズをバンガロールで始めた。ニキルは、コーヒー王の故V・G・シッダールタが創業し現在は金融サービス大手の傘下にある仲介フランチャイズを運営していた。
10年までに兄弟は、フランチャイズ・オーナーではなく自力でやっていけるようになった。ふたりは長年の経験から、既存の仲介企業を通じて市場参入を図ろうとする個人投資家にとって何がペインポイントなのかを承知しており、新しいオンライン・ベンチャーでその解消を図ろうとした。例えば、ゼロダは必ず、すべての取引手数料を事前に開示し、しかも低く設定するようにした。


