地球の衝突クレーターを特定する上で、衛星リモートセンシング(人工衛星に搭載の測定器による観測)はどれくらい重要だろうか。
ケーベルによると、これまではある程度有用だったが、すでに限界に達している。というのも、衝突起源であることが明白な円形構造はすでにすべて特定されているからだ。
それでもケーベルのもとには、Google Earthを使って衝突地形を探す愛好家から、新たな衝突クレーターを発見したとする情報が次々と送られてくるという。だが、送られてくる写真のほぼすべてが、完全に地球の地質学的過程で形成されたものだと、ケーベルは説明した。
ケーベルによると、天体衝突は現在知られている最も強力な地質学的作用だ。天体衝突1回の単位面積当たり、影響を受ける岩石の単位容積当たりのエネルギーは、最大級の火山噴火のエネルギーのおよそ百倍から数千倍に及ぶという。
実際、膨大なエネルギーが解放されるため、影響を受ける岩石に含まれる鉱物の構造に変化が生じるほどだ。
円形のクレーター状地形が地表に形成される、天体衝突以外の地質学的過程については、名前を10個以上挙げることができると、ケーベルは述べている。この点から考えて、衝突クレーターを特定する仕組みとして非常に重要になるのが衝撃変成作用だと、ケーベルは指摘する。
ケーベルはノートパソコンを取り出し、天体衝突の衝撃を受けた痕跡がある石英の結晶の拡大画像を見せてくれた。
通常の結晶は、このような外見にはならないと、ケーベルは説明する。結晶全体に走る線は衝撃ラメラと呼ばれる変形構造で、天体衝突によってのみ形成され、他の地質学的過程では形成されないという。
では、衝突クレーターはすべてどこに存在しているのか?
ケーベルと研究チームが2024年に学術誌Precambrian Researchで発表した論文によると、古代のクレーターの少なさは、約7億2000万~6億5000万年前に地球全体が凍結するほどの激しい氷河期「スノーボールアース」が発生し、氷河下の浸食が起きたこととも関連している。これにより数kmに及ぶ物質が大陸から剥ぎ取られたが、これは既存の衝突クレーターのうちで大型のものを除く大半を消去するのに十分な量と考えられると、論文に記されている。


