宇宙

2025.05.23 10:30

太古の「衝突天体」探索、地球の惑星防衛にどう役立つか

カナダのケベック州中部にあるマニクアガン(Manicouagan)衝突クレーターの衛星画像。約3100平方kmにわたって広がっており、現在はマニクアガン湖となっている。約2億1200万年前の三畳紀末に直径約5kmの小惑星が地球に衝突して形成されたと考えられている(NASA GSFC Landsat/LDCM EPO Team)

カナダのケベック州中部にあるマニクアガン(Manicouagan)衝突クレーターの衛星画像。約3100平方kmにわたって広がっており、現在はマニクアガン湖となっている。約2億1200万年前の三畳紀末に直径約5kmの小惑星が地球に衝突して形成されたと考えられている(NASA GSFC Landsat/LDCM EPO Team)

恐竜を死滅させたほどの地球衝突天体は、現在では遠い過去の遺物と見なされることが多い。実際に、地球への小惑星襲来の大半は、約6600万年前に地球に衝突したこのチクシュルーブ衝突天体よりも数十億年遡る時代に起きたものだ。

だが、天文学者は毎年、小惑星を新たに検出しており、小惑星の衝突はいまだに現実の脅威として存在する。国連は2029年を「小惑星認識と惑星防衛の国際年」と宣言しているほどだ。

オーストリア・ウィーン大学の惑星科学者クリスティアン・ケーベルは、同国で開催された欧州地球科学連合(EGU)2025年総会の席上で取材に応じ、たとえ直径50mの小型天体でも大都市に衝突すると100万人が犠牲になりかねないと語った。ケーベルによると、地球の公転軌道と交差する軌道を持つ地球横断小惑星や、地球に接近する軌道を持つ地球近傍小惑星が、現時点で4万個あることが知られている。これまでの10年間で検出された地球近傍小惑星は10万個に上る可能性があるという。

それにもかかわらず、地球では現在知られている衝突クレーターは200個しかなく、形成年代が22億~23億年前と紛れもなく古代のものと判明しているのは3個だけだ。そして、正確に形成年代が決定されているのは、200個のうちの半数足らずにとどまる。

ケーベルによると、この数はあまり多くはないが、地球は地質学的に活発な天体なため、時代を経るにつれて表面の状況が変化する。

風化や浸食、火山活動に加えて、地球が地殻をリサイクルするプロセスであるプレートテクトニクスに常に晒され続けるからだ。

月のクレーターと衝突天体との関連性は?

ケーベルによると、17世紀イタリアの天文学者ガリレオ・ガリレイが衝突クレーターとして現在知られている地形が月面にあることを最初に発見したのは1610年だが、月のクレーターと天体衝突との関連性が初めて地質学的に実証されたのは、人類初の月面着陸を果たしたアポロ11号で採取された岩石サンプルを地球の実験室で分析した結果としてだという。

だが、恐竜を絶滅させた衝突天体の証拠が発見された1980年代には、非常に小型の小惑星でも、衝突天体の20倍以上の大きさのクレーターが形成されることを、地質学者が明らかにした。

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翻訳=河原稔

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