経営・戦略

2025.05.28 13:30

日本経済を底上げできる「地域コングロマリット経営」とは

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2025年5月23日発売のForbes JAPAN7月号は「ビリオネアランキング2025 マスク、トランプの恩恵を受けたのは誰か?」と「未来は買える」を特集。毎年恒例のビリオネア特集で掲載する成功者の多くは、資産をもっていない時から、未来を買うために動いている。何を買うかにその人の理想が詰まっていて、それを実現するために、仲間や情報、お金を集めていく。では、人や企業はどんな理想を描いて、何を買うのか。その「買いもの例」から成功の道を探る。

労働力不足やマーケット縮小に直面する地域において、中堅・中小企業がどう成長できるか。単一事業の弱点を補うため、複数の事業を連携させる手法が脚光を浴びている。


「日本に存在する全300万社を超える企業のうち、売上高100億円を達成しているのはわずか1%。しかし今、10億円ほどの企業が、100億円企業となるケースが増えています。その背景には『地域コングロマリット』があります」

そう語るのは、船井総合研究所のマネージング・ディレクター、鈴木圭介だ。単一業種のシェアにより地域のトップを目指すという戦略は、市場の縮小が避けられない時勢にはそぐわない。これに対し、多業種かつ地域を限定した戦略に勝ち筋を見出す企業が伸びているという。

中小企業庁は今年に入り、売上高100億円を目指して挑戦する企業や経営者を後押しするため、「100億宣言」というプロジェクトを始めた。一定規模の企業の創出とその成長は地域経済にインパクトをもたらすからだ。地域コングロマリット企業は地域の需要を「面」で押さえ、多業種を展開している企業グループであり、地域経済を活性化する存在として注目が集まっている。

その成功事例を紹介していこう。

まず一例目が、愛知県の知多半島で1935年に創業したエネチタである。祖業は石炭の販売会社だが、ガソリンスタンド事業やガス事業に拡大し、さらにリフォームや不動産、コインランドリー、フード事業などに進出。狭い商圏ながら8事業41拠点を置く。2011年は、5億4000万円の粗利のうち、エネルギー関連の構成が86%だったが、23年には新規事業が62%を占め、粗利も31億円にまで伸びた。「短いスパンでポートフォリオが大きく変わりました。地域コングロマリットの成長パターンで理想的と言えます」(鈴木)

成功の秘訣は、築こうとしているコングロマリットのストーリーや共通の価値観があること、各社の企業文化が近いことにある。ここで言う文化とは、「toB」か「toC」か、また、緻密さを求める製造業か、逆に自由な雰囲気による斬新な発想を求める商品企画か、といった分類がわかりやすい。流行りに手を出しても成長できないケースは、企業文化に合っていないことが多いと鈴木は分析する。

自社の資源を元に新たな事業を始める手もある一方、社外の資源を得ることで事業を付加していくこともできる。

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文=真下智子

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