経営・戦略

2025.05.28 13:30

日本経済を底上げできる「地域コングロマリット経営」とは

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佐賀県唐津市にあるヒューベストホールディングは M&Aによる新規事業展開を含め、自動車販売の単独業からの転換に成功した地域コングロマリット企業だ。地元の工務店をM&Aでグループにし、不動産事業も傘下に収めると、顧客層が重複しているローコスト住宅と中古車の相乗効果を得た。さらに異業種のフィットネスなどスポーツ事業へも参入。ポイントは、「地域内クロスセル」による事業拡大だ。

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船井総研あがたFAS取締役執行役員でM&A部門を牽引する光田卓司はこう語る。「前提として、会社のビジョンを策定する。目標から逆算し、どのピースをM&Aで埋めていくかを熟考する。チャレンジが怖くないと思える資質を経営者がもっているかもかなり重要になると思います」

経営者のチャレンジ精神が、社員のマインドも大きく変え、事業拡大につながった事例がある。広島にあるヒロマツホールディングスだ。マツダ創業の地で、92年続く自動車販売店(広島マツダ)を中核とするグループの持ち株会社だが、当時6代目社長の松田哲也(現ヒロマツホールディングス会長)が「これまでの広島マツダをすべてぶっ壊す」と方針を打ち出し、「地域の車屋」から「地域の有力企業」へと転換を図る。転機となったのは、2016年に完成した「おりづるタワー」の建設だった。「広島の地に恩返しを」との思いから、松田はおりづるタワーの前身の建物を購入すると、コンセプトからデザイン、設計をはじめ、タワー内の物産館で販売する商品の選別から陳列まで社員全員で考えて進めた。社員の「自分たちは車屋じゃない!何でもできる」とマインドブロックが外れ、次々とM&Aによる新規事業を成功させている。現在、不動産や飲食、アパレルなど37社を擁し、売上高は340億円を超えている。

上記の事例いずれにおいても、企業規模の拡大に比例して知名度が上がることで、地方の中小企業の大きな課題でもある、継続的な優秀な人材の確保という相乗効果も生まれているという。

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単一業種の弱点を複合化することで消しながら各事業を拡大させる。地域内での存在感を高めれば、事業承継やM&Aの相談を優先的に得られる可能性も高まる。「地方創生には地方に元気な企業が絶対に必要です」と鈴木は強く語る。「元気なコングロマリット企業がある地域は、その地域自体も活性化しています。未来に向けての明るいニュースではないでしょうか」

新規事業を立ち上げ第二本業へと育てる地域コングロマリット経営船井総合研究所(同文舘出版)地域コングロマリット経営の5類型、新規事業を導入する際の手法と判断軸について解説している。
新規事業を立ち上げ第二本業へと育てる地域コングロマリット経営船井総合研究所(同文舘出版)地域コングロマリット経営の5類型、新規事業を導入する際の手法と判断軸について解説している。

文=真下智子

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