経済・社会

2025.05.22 14:00

トランプ関税で車の安全基準が後退するおそれ 米ルール「歩行者保護」が欠落

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──書簡では車両の安全基準について「より高い基準に合わせる」ことの重要性にも触れています。これは米国から見た場合、自動車の輸出入にどのようにプラスにはたらきますか。

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「もし米国が歩行者保護に関する規制を適用すれば、(トランプが主張するような)それを口実とした米国製自動車の輸入妨害などというものもなくなるでしょう。世界の規制基準がもっと調和すれば、基本的には、国境を越える貿易は円滑になり、スケールメリットも高まり、その結果、より安全な車がより安価に提供されることになります」

──米国は主要な自動車生産国で唯一、歩行者保護規制を適用していない国です。米国でもこうした規制が提案されていますが、導入は危ぶまれているのでしょうか。もし危ぶまれているとすれば、それは米国製自動車の取引にどんな影響を与えそうですか。

「わたしたちは、ショーン・ダフィー米運輸長官が前任者による歩行者保護に関する規制案を撤回するのか注視しています。2026年に米国NCAP(新車評価プログラム)試験の仕様が改定される予定ですが、そこで歩行者保護が保持されるのかにも関心を寄せています」

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(書簡にはこうある。「残念ながら、自動車の主要生産国のなかで、このよく知られた(歩行者安全)基準をまだ適用していないのは米国だけです。ただ、この状況は変わろうとしていました。昨年、米道路交通安全局(NHTSA)は、歩行者保護に関する措置を提案し、2026年から米国NCAPに歩行者保護試験を含める連邦規制案を示しました。つまり、米国が自国製自動車の市場アクセスを改善する最も簡単な方法は、主要な競合国・地域がすでに適用している歩行者保護基準をNHTSAが導入することなのです」)

書簡に署名した各団体は、ITF加盟国の交通担当相にいくつかの行動を推奨している。関税や貿易に関する交渉では、車両の安全基準を対象に含めないようにするというのもそのひとつだ。これは、自動車貿易をめぐる交渉の結果次第で、車両の安全基準を損ない、一般の人々を危険にさらすことになるのを避けるためだ。

一方で、各団体は、交渉の結果によって、道路の安全性と自動車の国際取引の両方が向上する可能性があるとも強調している。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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