経済・社会

2025.05.22 14:00

トランプ関税で車の安全基準が後退するおそれ 米ルール「歩行者保護」が欠落

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(ウォードは最近、グローバルNCAPの公式ウェブサイトへの投稿で、トランプが4月7日にホワイトハウスで行った発言を引用している。「関税だけではありません。非金銭的な『関税』というものもあります。車を売るのを不可能にするようなものが課されているのです。金銭的なものではありません。彼らは基準や試験をとても難しくしている。20フィート(約6メートル)上から車の屋根にボウリング球を落とし、少しでもへこめば『申し訳ありませんが、貴社の車は基準を満たしていません』言うのです」

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──関税や貿易紛争をめぐって、自動車産業は現在どのような状況に置かれていますか。交渉が安全基準に影響を与えそうな兆しはありますか。

「現時点ではまだ何とも言えませんし、貿易紛争は継続中です。英国は自動車分野を含む取引をまとめ、一定の数までの自動車については、米国から脅されていた25%(編集注:乗用車で2.5%の従来の関税に上乗せされた)の関税が10%に引き下げられました。この合意で、米国の自動車メーカーにどのような市場アクセスが与えられるのかは不明ですが、問題は依然として残っています。米国の自動車メーカーは、英国で義務づけられている歩行者保護基準を適用していないという問題です」

──最悪のシナリオはどんなもので、その場合、国際的に確立された安全基準にどのような影響が予想されるのでしょう?

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「最も影響を受けやすい規制基準は、歩行者保護試験に関する要件です。なぜなら、これは米国で適用されていないからです。こうした要件は現在、中国やインド、欧州連合(27カ国)、日本、韓国、英国で適用されています。もうひとつのリスクは、米国からの報復を恐れるあまり、各国が国連の車両規制に関する枠組みを利用するのをためらうようになることです」

(書簡はこう言及している。「ドナルド・トランプ米大統領は最近、歩行者保護に関する規制が米国製自動車の取引を妨げるために利用されていると批判しました。けれど、2008年から国連の基準として世界各国で導入可能になっているこの試験の目的は、実際のところ、ボンネットやバンパー部分を柔らかくして、歩行者が自動車にぶつかられた際に頭部や胸部、足を負傷するリスクを低減することにあります」)

次ページ > 前米政権が打ち出した歩行者保護規制案の行方

翻訳・編集=江戸伸禎

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