欧州連合(EU)で亡命を認められた難民をどこに定住させるべきかとの問題を巡り、ドイツとギリシャの間で長らくくすぶっていた対立が再燃している。ドイツの裁判所が先月、難民の到着国への送還を認める判決を下したことを受け、送還先となるギリシャのマキス・ボリディス移民・庇護相はニュース局スカイに対し、ドイツから送り返された難民を受け入れないと明言した。
これは、EU加盟27カ国のいずれかに個々の亡命申請の責任を割り当てる「ダブリン規則」に関連する問題だ。この規制は亡命申請者を1つの国に縛り付け、欧州内での移動を制限するものだ。移民や難民を巡る欧州の複雑な政治で長らく役割を果たしてきたダブリン規則では、難民申請者は通常、最初に登録された国に縛られることになる。もし難民申請者がEUの別の国に定住するために移動した場合、理論的には元の国に送り返されることになる。
この規則が、現実の運用では問題となっている。亡命希望者と不法移民の大半はイタリアとギリシャ(以前はハンガリーも)というごく限られた国に到着し、その後、EU内の他国に定住先を求めて移動する傾向がある。到着地であるギリシャなどの国々は、ダブリン規則により、難民申請者の処理と収容の責任を不当に多く負わされることになるとして、長い間不満を訴えてきた。特に、EU加盟国の中でも比較的裕福な北欧諸国と比べ、これら南欧や東欧の国々の財政状況が悪いことで、この問題は深刻化している。
ドイツの難民政策の変化
2015~16年に中東やアフリカから100万人以上の難民が欧州に押し寄せた「欧州難民危機」の際、ドイツはダブリン規則に基づく難民の到着国への送還を一時停止した。これは欧州の連帯行為として歓迎された。実際に人々を到着国に送り返すという措置は、長い間難しい問題を突き付けてきた。ドイツの地方裁判所は2021年、イタリアを経由してドイツに到着した難民申請者2人について、イタリアの受け入れ環境がこの2人の健康に悪影響を及ぼす可能性があるとして、最初に到着したイタリアに送還することはできないとの判決を下した。基本的なサービスの欠如や地元社会からの差別、さらには嫌がらせや暴力、経済的困窮といった問題はすべて、このような判決を生み出す要因となる。現実的に考えると、最初に登録した国に送還された場合、多くの人がそのような問題に直面することになるかもしれない。
ところが2025年現在、ドイツの裁判所では、難民を最初の到着国であるギリシャに送り返す道を開く判決が相次いでいる。これを巡り、各種市民団体からは、ギリシャの難民受け入れ環境が劣悪だとして異論が出ている。ギリシャ側もドイツの一連の判決に異議を唱え、以前と同じように「不公平な負担」を強いるものだと訴えている。ドイツ公共放送ドイチェベレが伝えたところによると、ギリシャのボリディス移民・庇護相は「EU内で負担を公平に分配しない限り、ギリシャはいかなる送還も受け入れない」と表明した。
今後何が起こるかは不明だが、この状況は、難民を巡るEU内の北欧諸国と南欧諸国の亀裂を広げる可能性が高い。一方、EU域外のいわゆる「送還ハブ」に難民を押しやる制度を求めるEU内の政治家らは、こうした動きを自分たちの目的のために利用するかもしれない。ギリシャ自身も、ドイツの政治家らと同様、このような制度を求めてロビー活動を行っている。このように、ダブリン規則に基づく難民の送還を巡る緊張が、両国を「送還ハブ」の設置を求める協力へと駆り立てているのかもしれない。



