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2025.05.24 09:00

トランプ関税でドルが「下落しなければおかしい」理由と、2つのシナリオ別投資戦略

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ドルの先行き

例えばドル円の長期チャートを見ると、ドルは現在高値圏にあり、自国通貨が安い日本は米国に輸出しやすい状況にある。

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もしドルの価値が現在の3分の1(歴史的に持続可能で、手に入れやすいレベル)にまで下がれば、米国から見た輸入価格は33%上昇する。同時に、米国からの輸出品は30%安くなり、競争力が高まる。中国やヨーロッパも通貨を切り上げれば、貿易の流れは劇的に変化するだろう。

しかしたとえそうでなくても、米国は針を動かせる。金利を下げ、必要に応じて量的緩和を実施すれば、同じ結果を得られるのだ。これはもちろん為替操作であり、どの国もやっているが否定していることだ。米国がゲームを始めれば、他の国もリフレ-ション(デフレを脱却し、まだインフレにはならない程度の状態)競争に加わるだろう。それでも本格的な貿易戦争よりはましだ。

シナリオBで起こること

シナリオBにおいて起こりうることは以下の4つだ。

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・好景気
・インフレ
・資産価格の高騰(不動産と株式)
・資産インフレによって加速する、新たな好不況のサイクル

インフレが1970年代の水準にまで達しないことを、祈るばかりだ。

もちろん、これは連邦準備制度理事会(FRB)の対応にかかっている。貿易戦争によるメルトダウンに直面した場合、FRBにはどのような選択肢があるのだろうか。

シナリオCの存在

シナリオCでは、米国は大口を叩きながらも何もしない。

これは、継続的な混乱、慢性的な不確実性、そして一般的に弱気な基調を意味する。

当然ながら、「もし」という言葉が多くなってしまうのだが、起こる可能性が高いのはシナリオAかシナリオBである。私たちは市場を観察することで、その発生可能性を垣間見ることができる。

・市場が暴落すれば、シナリオA
・ドルが下落した場合、シナリオB

シナリオAにおける投資戦略は、金と現金を保有し、じっと待つことだ。一方で、シナリオBにおいては株式を買い持ちすることが望ましいだろう。もしインフレに対するヘッジが欲しいのであれば、金やその他のインフレに強い資産を持っても良い。

不確実性は、不安定な通貨供給を生む。したがって、不確実性はインフレの母でもある。そして、この先も不確実性は山ほどある。世界経済が成長へ向けて疾走する中、今後も乱高下の展開が予想される。予測不可能性が良い結果をもたらすことはまれだ。

しかし、シティコープのチャック・プリンスが、ウォール街の金融システムが崩壊したときに言った有名な言葉がある。「音楽が流れたら、立ち上がって踊らなければならない」

forbes.com原文

翻訳=江津拓哉

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