嬉しいニュースが飛び込んできた。世界のトップワイン生産家族で構成される団体「プリムム・ファミリエ・ヴィニ(PFV)」が主催する「PFV賞」に、京都の堤淺吉漆店が選ばれたのだ。同賞3度目にして、日本から初めての受賞となる。
この賞は、世界の優れた家族経営企業の支援を目的としたもので、受け継がれる伝統や職人技を次の世代に継承し、持続可能な発展を重視する企業を表彰するもの。受賞者には、12のPFVメンバーのワインとともに10万ユーロ(約1600万円)が授与される。
前回の2022年にファイナリストに選ばれていた堤淺吉漆店は今回は再エントリーとなる。世界各地から多くの応募が寄せられたというが、そのなかから、PFVが大切にする「クラフトマンシップ」、「伝統」、「革新」の価値を備えた5ファミリーがファイナリストとして選出され、最終的に、堤家のビジョン、コミットメント、そして家族の遺産を未来へと受け継ぐ力が高く評価された。
堤淺吉漆店は、1909年に京都で創業し、4世代・100年以上にわたって漆精製を営んでいる。漆は日本の伝統工芸だが、過去40年間で大幅に生産が減少し、存続の危機にさらされているという。そんななか、4代目の堤卓也氏は新たな価値やアイデアを創出し、その伝統を将来に繋いでいくために尽力。筆者も以前、京都にある堤淺吉漆店を訪れ、受け継がれてきた職人技と伝統に触れた。
PFVの現会長でポルトガルのワイン生産者「シミントン・ファミリー」のチャールズ・シミントン氏は、「堤淺吉漆店は伝統を尊重しながらも今の時代にあった技法を取り入れるなど、革新を続けています。クラフトマンシップを次世代へ継承する重要性を理解し、それに取り組んでいる。こうした堤ファミリーをPFV賞を通じてサポートすることを大変誇りに思います」とコメント。
また、授賞式のため訪れた京都で目にした漆精製について、次のように語っている。
「京都での堤さんのワークショップは、本当に刺激的なものでした。真の職人技や伝統への深い敬意は、何世代にも渡る私たちのワイン醸造家として大事にしているものと共鳴するものです。
なかでも、最も心に残っていることは伝統と革新の調和です。何百年も前からの技術に裏打ちされたワークショップは、驚くほどモダンなスペースで行われました。そこには、時代を超えた芸術的な古い工芸品と一緒に、漆が塗られたサーフボードやスケートボードが展示されています。このような予想しないような対比は実に美しく、また、受け継いでいくものが魂を失わずに、次の世代に適応や改良していくことを示していました」



