「これこそが、私たちPFVが大切にしていることです。私たちも、永く続いていくためには、伝統だけではなく、将来を見据えたイノベーションを受け入れなければならなりません。
また、堤さんのサステイナビリティへの関与は、近隣で手に入る自然の素材を使ったり、将来の世代のために漆の木を植えるなど、環境に対する責務を果たしている好例だと感じました。漆精製が劇的に減少するなか、これを維持していくという堤さんのレジリエンスや決意に触れ、私たちも勇気付けられ、心揺さぶられました。堤さんとの出会いは、私たちPFVファミリーが共通して大事にする家族のレガシーや伝統工芸の素晴らしさを再確認するものでした」
加えて、シミントン氏に日本の伝統工芸やクラフトマンシップへの関心を尋ねると、次ような答えが返ってきた。
「日本で最も感激したのは私たちと共通した価値観や考え方です。真のクラフトマンシップは、単なる技術ではなく価値あること。多くの素晴らしい日本の職人たちと同様に、PFVファミリーは単なるワイン生産者ではなく、文化的なレガシーを守る者なのです。家族、場所、そして使命は国を超えて不変のものであり、そしてこれらは日本のクラフトマンシップに美しく根付いていました」
一見、漆とワインとは無縁に感じるが、堤家とPFVワイン生産者たちの共通点は、家族経営を守り、伝統や職人技を後世に継承していくという使命とも言える強い意志にあるのだろう。また、堤氏がPFV賞に応募したきっかけにも、実はワインの存在がある。北海道大学時代にともに農学を学んだ友人で、現在ニュージーランドのワイナリー「Folium」でワイン醸造に携わる岡田岳樹氏によるすすめだったのだ。岡田氏もまた、日本人醸造家として世界を舞台に、これまでとは一線を画するワイン造りに挑戦している。
全国各地に、家族代々受け継がれている伝統工芸が根付く日本にはますます世界から注目が集まるが、それが今回の受賞という形で顕在化したのは更なる追い風になりそうだ。
今回の賞のファイナリストには、1688年創業の着物織物会社であるHOSOOも選ばれている。授賞式は4月に京都で執り行われ、PFVのメンバーたちが世界中から集った。
島 悠里の「ブドウ一粒に込められた思い~グローバル・ワイン講座」
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