北米

2025.05.22 16:00

AIポルノ拡散を防止する新法「テイク・イット・ダウン法」発効へ トランプ大統領が署名

2025年5月19日、「テイク・イット・ダウン法(Take It Down Act)」に署名したドナルド・トランプ米大統領とメラニア・トランプ大統領夫人(Photo by Chip Somodevilla/Getty Images)

2025年5月19日、「テイク・イット・ダウン法(Take It Down Act)」に署名したドナルド・トランプ米大統領とメラニア・トランプ大統領夫人(Photo by Chip Somodevilla/Getty Images)

トランプ米大統領は5月19日、本人の同意なくオンライン上に公開された露骨な性的画像の削除をソーシャルメディア企業に義務付ける法案の「テイク・イット・ダウン法(Take It Down Act)」に署名した。

advertisement

この新法によりオンラインプラットフォームは、正当な要請を受け取ってから48時間以内に、人工知能(AI)で生成されたディープフェイクを含む、同意のない性的な画像を削除しなければならなくなる。近年は、AIを搭載したアプリを用いて露骨なヌード画像を簡単に生成できるようになっており、本人の知らないところでこうした画像が拡散されるケースが増えている。

この新法は、超党派の議員の協力により成立したもので、そのきっかけとなったのは、ある女子学生が共和党のテッド・クルーズ上院議員に露骨な画像の被害を訴えたことだった。この学生のクラスメートは、アプリを使って彼女のヌード画像を作り、それをスナップチャットに掲載した。彼女はこの画像を削除するよう同プラットフォームに要請したが、数カ月経ってもその削除要請が実を結ばなかったため、彼女の母親がクルーズ議員の事務所に助けを求めたという。

新法のテイク・イット・ダウン法は、被害者からの正当な要請を受け取ったプラットフォームに対し、問題のある画像を48時間以内に削除する義務を負わせるものだ。

advertisement

この法案は主に、ディープフェイクの被害を受けやすい若年層の保護に主眼を置くものではあるが、近年では教師や政治家などが被害に遭うケースも増えている。性的画像が流布されたことで、精神的なトラウマに見舞われたり、職を失うようなケースも増えている。

この法案を推進した「性的暴力防止協会(Sexual Violence Prevention Association)」創設者のオムニー・ミランダ・マートンは、「ディープフェイクポルノなどの性的コンテンツが原因となる職の喪失は、世間が思っている以上に頻繁に起きている」と説明する。彼女によれば、このような画像がネット上に投稿されると、それが検索結果に現れて被害者の将来の就職の機会を危うくしたり、職場で働きにくくなるケースがあるという。

また、世間の注目度が高い政治家も、こうした攻撃の標的になる場合があるようだ。誤情報と戦う団体のアメリカン・サンライト・プロジェクトの報告によれば、これまで3万5000点にも及ぶ米議会の26人の議員(うち25人が女性)を描いたディープフェイクのポルノが確認されたという。

女性差別を増幅するツール

さらに、著名人が被害に遭うケースも多い。2024年1月には、テイラー・スウィフトの性的なディープフェイク画像がSNS上で拡散され、削除されるまでに数百万回も閲覧された。

女性の権利擁護団体エブリデイ・セクシズム・プロジェクトの創設者のローラ・ベイツは、英紙『ガーディアン』に対し、「ディープフェイクポルノは、女性をコントロールするための新たな手段だ」と述べている。「このような性的画像は、『お前が誰であろうと、どんなに力を持っていようと、我々はお前をただの性の対象に貶めることができるし、お前には何もできないのだ』というメッセージを送っている」と彼女は指摘した。

一方、48時間という削除期限は、プラットフォームが対応するためには妥当な時間かもしれないが、当事者にとっては耐えがたいほど長く感じられるものだ。今回の新法はプラットフォームに対し、被害を報告してコンテンツの削除を要請するための方法を明示することも義務づけている。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事