私の記事を20年以上読んでくださっている方なら、私が破滅論者でないことはご存知だろう。確かに、私は頂点を予測したこともあるが、それと同じく底を予測したこともある。今回、私は直近の頂点についての予測は当てることができたが、底については検討外れなものだった。それでも、すべての予測を当てることはできないし、率直に言って、私はこの歴史的な強気相場をほとんど信用していない。
こうした記事を書くと、「金を買え、ドルは終わりだ」などと常に主張する破滅論者のように思われるかもしれない。先に言っておくが、世界の終わりは近づいていない。しかし、注意しなければいけないリスクはある。
最初から始めよう。米国の1人当たりのGDPは約8万5000ドル(約1220万円)だ。正直なところ、数字は統計によってさまざまだが、今回はこの数字を使おう。ルクセンブルクやアイルランドのような小国を無視すれば、基本的に、この数字は世界でも有数の規模である。しかし、本稿で述べたいのはそういった話ではない。
では、日本へ話を移してみよう。日本は豊かな国だ。しかし、1人当たりのGDPは3万4000ドル(約490万円)だ。つまり、米国の1人当たりのGDPは日本の2.4倍なのだ。この数字に従えば、米国は日本の2.4倍「豊か」であるはずだ。
「いや、そんなことはあり得ない」と思う人がほとんどだろう。しかし、これが数字が語る「現実」なのだ。
では、なぜそうなるのか?
政府支出はGDPに含まれている。もちろん、政府が税金を使うことで富を生み出していると考えない人にとっては、これはあきれた話である。しかし、その部分を除く民間部門だけのGDPを見ても、上記の構図は変わらない。
確かに日本経済に対して、人口の高齢化、経済の停滞、その他もろもろについて、多くの問題点をつらつらと書くことはできる。しかし、ひとたび日本を散歩すれば、あなたの目には「豊か」である日本が映り、この国が米国と同等な国であると感じることだろう。また、スウェーデンを散歩するとき、米国がこの国よりも50%豊かであるという印象を受けることはない。平均的な米国人は、平均的なカナダ人よりも50%豊かなのだろうか? 私は最近カナダに行っていないが、そんなことはないだろう。



