2025.06.01 14:15

バリ島のマイクロリゾート 3人の若手投資家が実現した「感情に響く時空間」

バリ島の東部・シデメンのリゾート「NUMA(ヌマ)」

バリ島の東部・シデメンのリゾート「NUMA(ヌマ)」

「だれにも知らせたくない」と思うほど気に入ったホテルやリゾートには、そうそう出会えるものではない。私にとってその一つが、バリ島の東部・シデメンにあるマイクロリゾート「NUMA(ヌマ)」だ。

ラグジュアリートラベラーの間で静かに話題を呼ぶ、たった3棟のヴィラで構成されるこのリゾートには、世界中を旅する3人の若手イタリア人投資家の美意識、ホスピタリティ、戦略、そして夢が凝縮されている。

3人の若手投資家が描いた「楽園」

スライドベッドはレールの上を好きな位置に動かせる
スライドベッドはレールの上を好きな位置に動かせる

デンパサール空港から車で2時間以上、ウブドの街から90分。NUMAが位置するシデメンは、決してアクセスのいい場所ではない。その分、山間の農村には手つかずの自然や棚田が広がり、眼前にバリ島で最も神聖なアグン山が雄々と聳える。山裾に朝靄や夕霧がかかる姿は幻想的で、見ているだけで心身が浄化される。

各ヴィラでは、この荘厳な景色を、ベッドに横たわったまま、プールに身を浮かべながら、肌寒ければ焚き火にあたりながら眺めていられる。それだけでもはるばる足を運ぶ価値がある。

「どのゲストも到着した瞬間から驚きを隠せない様子です。我々は、『人生で一度は訪れるべき場所』と感じるような、思わず『ワオ!』と声が出るような体験を提供したと思っています」

こう語るのは、クリエイティブディレクターのアルベルト・ザンドメネギ。財務担当のジョルジオと、税務を担当するジュゼッペ・トロイア兄弟の3人で、ある日スペイン沖のメノルカ島でビーチに寝転びながら意気投合した。「人々の心を打つ唯一無二のラグジュアリー体験を創ろうじゃないか」と。

あちこち候補地を巡るなかで、チャングーやクタといった観光地の喧騒と一線を画す、バリ島の本来の美しさを体感できるシデメンに魅了され、迷わずこの地での開業を決めた。都会的な利便性よりも、目の前に広がる壮大な景色と自然と共生する体験価値こそが、NUMAのコンセプトにふさわしかったのだ。

そうして2023年にNUMAを創業。8カ月の間に毎日40人以上の地元の職人を雇い入れ、急ピッチかつ丁寧に建設を進めた。翌夏にはオープンにこぎつけ、イタリア在住の3人は、現在リモートで運営に当たっている。

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文=山田理恵

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