食&酒

2025.05.31 14:15

400年続く京都・瓢亭 15代目当主はなぜ「トマト醤油」をつくったのか

京都市左京区・南禅寺にある「瓢亭」15代目当主・髙橋義弘氏

その環境で先代から得た一番の教えは、「日本料理というのは、塀から片足を出すくらいがちょうどで、決して両足で飛び越えてはいけない」ということ。それは、「不易流行」という言葉でもよく言われたという。

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「不易流行」とは、芭蕉が提唱した理念のひとつで、「不易」と「流行」は相反するように見え、本質は同じであり、どちらも大切にしながら新しみや変化を探求することを意味する。つまり、伝統は守るだけでは、さび付いて古びたものになってしまう。いつまでも愛される店であるためには、革新が必要であるということを、先代も十分に理解されていたのであろう。

時代とともに進化する「出汁」

「父は料理の中枢にある出汁の材料を、鰹節からまぐろ節に替えました。よりまろやかで、柔らかい出汁になりました。それを、私がまた微調整して、今の出汁にいたっているのです。ほかにもトマトウォーターのジュレを料理に使うなど、先進的な試みもしてきました」

より具体的に尋ねると、これまでは、利尻昆布を沸騰直前まで温めていたのを、65度から70度で小一時間ほど煮出すことで、より余韻の長い旨みが抽出できるようになったという。使う昆布の分量を以前より減らしても、この方法であれば、抽出できる旨みの量は変わらないそうだ。温暖化や海洋環境の変化によって、一等の昆布の収穫量が激減するなかでのサステナブルな取り組みでもある。

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また、一番だしを引く量自体もすごく減ったという。花形である煮物椀(椀物)はゆずれないが、以前は、炊き合わせからあえ物まで、何もかも一番出汁を使っていたが、海外のシェフに「いぶしたような香りが、どの料理からもして気になってしまう」と言われ、なるほどと思ったという。その後は、貝の出汁や野菜の出汁、魚の出汁と、それぞれの素材に合わせて出汁を引くなど、バリエーションを広げた。

例えばえんどう豆のご飯を炊くときには、えんどう豆のさやでとっただしで炊くのだという。その方がまぐろ節の出汁で炊くよりもえんどう豆の持ち味が引き立つ。炊き合わせにしても、野菜はその野菜の出汁で炊き、海老は昔ながらに八方出汁で炊き、菜っ葉は両方の出汁で炊く。

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