米国時間5月20日に開催されたグーグルの年次開発者会議「Google I/O 2025」での目玉発表は、未来的なデモや新たなチャットボットの更新ではなかった。注目を集めたのは価格だ。グーグルの新しい「AI Ultra」(エーアイ ウルトラ)サブスクリプションは月額249.99ドル(約3万6000円。1ドル=145円換算)で、同社の最も強力なGeminiモデルとツール、さらに拡充中の自動化機能群への先行アクセスを提供する。
この価格は、市場にある定額制AIサブスクリプションの中でも最も高額な部類に入る。ただし、前例がないわけではない。OpenAIのプロプランや、Anthropic(アンソロピック)のClaude Max(クロード・マックス)プランも月額200ドル(約2万9000円)となっている。グーグルを際立たせるのは、そのバンドル形態だ。
Ultra AIプランには、同社の最高水準のGeminiモデル、実験的ツールへのアクセス、30テラバイトのクラウドストレージ、そしてYouTube Premiumが含まれており、開発者やパワーユーザーを対象に提供されているプランである。これは、Geminiを検索やWorkspaceの裏で動くエンジンとしてではなく、独立した収益化可能な製品として前面に押し出すというグーグルの方針転換を示している。
そのほか、グーグルはAI関連とハードウェア関連を織り交ぜた複数の発表を行った。
Android XRはメタへの対抗を鮮明に
Google I/O 2025ではハードウェアに関するニュースは限られていたが、新たに「Android XR」プラットフォームを披露した。XRはAR(拡張現実)、VR(仮想現実)、MR(複合現実)を含む包括的な用語であり、ヘッドセットやスマートグラスを通じてデジタルコンテンツを現実世界に重ね合わせる技術の総称である。
この新しいAndroid XRプラットフォームは、サムスンが近日発売予定のProject Moohan(Moohan=무한は韓国語で「無限」の意)ヘッドセットを皮切りに、多様なXR体験を支援するように設計されている。グーグルとクアルコムの協力のもと開発されたMoohanは、VRヘッドセットに類似した形状を備える完全没入型デバイスで、エンターテインメントや作業効率向上、AIを活用した対話を目的としている。
年内後半の発売が予定されており、Android XRを搭載してGeminiとの深い連携を実現し、バーチャル空間でのナビゲーションや案内、リアルタイムの支援を提供する見込みだ。
グーグルはまた、Gentle Monster(ジェントル・モンスター)、Xreal(エックスリアル)、Warby Parker(ワービー・パーカー)と共同開発している一連のAndroid XRスマートグラスのプレビューを公開した。これらのグラスにはマイク、カメラ、ディスプレイが組み込まれ、Geminiによるライブ翻訳や物体認識、視覚オーバーレイなどの機能を可能にしている。かつてのGlass(グラス)プロトタイプとは異なり、ここでは消費者が日常生活で使いやすいファッショナブルなデザインを重視している。
こうしたXR関連の発表によって、グーグルはすでにRay-Ban Meta(レイバン・メタ)スマートグラスを展開しているメタとの競合が明確になった。レイバン・メタスマートグラスはハンズフリーでの画像撮影、音声再生、メタAIとの統合などを提供しており、メタは「Orion」(オリオン)というコードネームのさらに高度なARヘッドセットを開発中とされ、より没入度の高い空間コンピューティングへ踏み込もうとしている。



