米議会上院は5月20日、レストラン従業員などのチップ収入を非課税にする「チップ課税撤廃法(No Tax on Tips Act)」の法案を全会一致で可決し、下院へと送った。このことは、昨年の大統領選でチップへの課税撤廃を公約に掲げたトランプ大統領にとって勝利といえる。
この法案は、最大2万5000ドル(約362万円。1ドル=145円換算)まで、現金によるチップ収入への課税を免除するもの。下院でも現在、トランプの政策をまとめた大型法案の一部として、同様の法案の審議が進められており、週内に採決される可能性がある。
この法案を提出した共和党のテッド・クルーズ上院議員は、20日の法案可決を受けて「チップへの課税の撤廃は、ほぼ間違いなく実現される」と語った。なお、新たな法律の適用対象は、年収が16万ドル(約2320万円)以下の労働者に限定されているが、この上限はインフレを考慮して毎年調整される。
この新法によって、所得分布の下位60%に属するチップ収入のある労働者が受ける平均的な減税額は、1260ドル(約18万円)になるとピューター・G・ピーターソン財団は試算している。米国のレストラン従業員は20ドル(約2900円)を超えるチップ収入を報告する義務がある。
トランプは昨年6月のラスベガスの演説で、「チップへの課税撤廃」を初めて提案していた。彼は、その際に残業代への課税を撤廃する案も打ち出し、後の彼の税制法案にも盛り込まれた。これらの提案は、後にカマラ・ハリス元副大統領の陣営にも取り入れられ、珍しく超党派の支持を集める提案になっていた。
チップへの課税撤廃を推進する人々は、レストランやホスピタリティ業界において、労働者の収入のかなりの部分を、チップが占めていることを指摘している。ある統計によると、チップはレストラン労働者の収入の平均約23%を占めているとされる。
しかし、保守寄りのシンクタンクのタックス・ファウンデーションは、チップへの課税撤廃によって「チップを受け取らない労働者との間に、税制上の不公平が生まれる可能性」を指摘し、「雇用主が基本給の引き上げを避けるインセンティブになりかねない」と指摘している。



