米航空宇宙局(NASA)のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)とハワイのケックII望遠鏡を用いた観測で、土星最大の衛星タイタンの北半球に雲の対流現象が初めて確認された。これは、タイタンにも地球と同じように天候の変化があり、雲が湧き、雨が降ることを示す新たな証拠だ。
ただし地球と異なり、タイタンの雲は水の循環ではなく、エタンやメタンなどの液体炭化水素の循環によって生じる。NASAによれば、タイタンは太陽系に存在する衛星の中で唯一、十分な大気を有し、雨、川、湖、海のある天体でもある。
太陽系で最も地球に似た場所、タイタンのワイルドな世界を紹介しよう。
ウェッブ望遠鏡がとらえたタイタンの気象
タイタンの気象については、NASAと欧州宇宙機関(ESA)が共同開発した土星探査機カッシーニと着陸機ホイヘンス、そしてハワイのW・M・ケック天文台などの地上に設置された望遠鏡によって、これまでも調査が行われてきた。
今回、ケックII望遠鏡の観測データとウェッブ望遠鏡の各種赤外線フィルターを用いた新しい観測データを組み合わせてタイタンの大気の構造を調べる新たな研究プロジェクトにより、この衛星の北半球で雲の対流が起こっている証拠が初めて見つかった。
タイタンの湖や海のほとんどは北半球にあり、そこではメタンやエタンの雨が降っていると考えられる。英科学誌ネイチャー・アストロノミーに掲載された論文の筆頭著者で、NASAゴダード宇宙飛行センターの惑星科学者コナー・ニクソンは、「タイタンの北極付近でメタンの雲が発達し、変化している様子を数日間にわたって観測できた。そこは、探査機カッシーニによってメタンの大きな海や湖が発見された地域だ」と説明している。
「この発見により、メタンの雲がどのように雨を降らせ、湖から蒸発したメタンがどのように雲に供給されているのか、タイタンの気候サイクルの仕組みをより深く理解できるようになる」



