宇宙

2025.05.21 12:30

土星の衛星タイタン北半球にメタン雲の対流を初確認、地球と似た気象循環の証拠

液体メタンの海が広がる、土星の衛星タイタンの想像図(Shutterstock.com)

タイタンの雲の下はどんな世界なのか

タイタンの大気は98%が窒素、2%がメタンだ。液体メタンの雨が降り、湖や海などを形成している。地表面を流れるメタン流体は海岸線を削り、谷や尾根、氷の岩、卓上台地、砂丘を形づくる。こうしたタイタンの物理的特徴はこれまでにも観測されてきたが、今回はメタン循環の証拠となる雲を確認できた。

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「タイタンでは、メタンは消耗品だ」とニクソンは言う。「何十億年もの間、地殻や天体内部からメタンが絶えず噴出・供給されている可能性がある。さもなければ、いずれメタンはなくなり、タイタンは大気のほとんどない塵と砂丘の世界になってしまうだろう」

タイタンは気温マイナス180度の極寒の世界だ。重力は地球の14%で、もし宇宙飛行士が降り立てば空中遊泳ができるはずだ。

タイタン表層には、大気中のメタンと窒素から生成される複雑な構造の有機化合物も存在する。これらの化合物には、生命の構成要素である前生物的な化学物質が含まれている可能性がある。ウェッブ望遠鏡はまた、タイタンの大気中に、複雑な大気化学プロセスを理解する上で重要な炭素含有分子(メチルラジカルCH3)を検出した。

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土星の衛星タイタンの大気中で起こっていると考えられる重要な化学プロセスを示した図。太陽光や土星磁気圏からの高エネルギー電子によって大気中のメタン(CH4)が分解され、メチルラジカル(CH3)が生成される。CH3は再結合してエタン(C2H6)となり、メタンやエタンが凝縮して雨となる(NASA, ESA, CSA, and Elizabeth Wheatley (STScI))
土星の衛星タイタンの大気中で起こっていると考えられる重要な化学プロセスを示した図。太陽光や土星磁気圏からの高エネルギー電子によって大気中のメタン(CH4)が分解され、メチルラジカル(CH3)が生成される。CH3は再結合してエタン(C2H6)となり、メタンやエタンが凝縮して雨となる(NASA, ESA, CSA, and Elizabeth Wheatley (STScI))

タイタンに降りたホイヘンスとドラゴンフライ計画

土星探査機カッシーニはNASAの旗艦探査機として、2004年から2017年まで続いた土星探査ミッションの一環でタイタンの上空約970kmを飛行し、驚くべき景観をとらえたデータを地球に送信した。2005年1月14日にタイタンの地表面へと投下された着陸機ホイヘンスは、2時間27分かけてパラシュート降下する間、歴史に残るタイムラプス動画を撮影した。着陸と同時にホイヘンスは地球から最も遠い天体表面に降り立った宇宙機となり、その称号は今も変わっていない。

土星の衛星タイタンの砂丘上空を飛行するドローン型離着陸機ドラゴンフライのイメージ図(NASA/Johns Hopkins APL/Steve Gribben)
土星の衛星タイタンの砂丘上空を飛行するドローン型離着陸機ドラゴンフライのイメージ図(NASA/Johns Hopkins APL/Steve Gribben)

2017年にカッシーニ・ホイヘンス・ミッションが終了して以来、NASAはタイタンの直接観測を行ってはいない。ただ、心躍る計画が待ち受けている。2028年7月にスペースXの大型ロケット「ファルコン・ヘビー」で打ち上げ予定のタイタン離着陸探査ミッション「Dragonfly(ドラゴンフライ)」だ。2034年にタイタン到着を目指すこのミッションでは、ドローンのような回転翼を備えた離着陸可能な探査機ドラゴンフライがタイタン各地を巡回移動し、地表面に何が存在するのかを分析する。

forbes.com原文

翻訳・編集=荻原藤緒

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