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2025.05.22 12:30

億万長者はセキュリティーにいくら使っている? 危険性が高まり護身サービス隆盛 米国

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富裕層や権力者に対する社会の憤りが増す中、米国の億万長者は自身や家族を守るため、追跡装置から警備部隊まで、あらゆる手段を講じている。

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米ニューヨークで昨年12月、大手保険会社ユナイテッドヘルスケアのブライアン・トンプソン最高経営責任者(CEO)が射殺された。今年1月にはフランスの暗号資産(仮想通貨)創設者ダビ・バランが誘拐され、身代金目的で2日間監禁された。さらに4月には米国の億万長者スティーブ・サロウィッツの自宅が放火され、容疑者は身代金と誘拐の脅迫もしていたと検察は述べている。こうした一連の事件を受け、億万長者は自身の身の危険に対する不安を強めている。

このような攻撃は、貧富の差を巡る不平等や世界各地で起きている戦争、極度に二極化した政治を背景に、富裕層や権力者に対する不満が高まる中で増加している。例えば、米エマーソン大学が最近行った調査では、米国の18~29歳の有権者の41%がトンプソンCEOを殺害したルイジ・マンジョーネ被告の罪を「容認できる」と回答したことが示された。米リスク管理会社ニソスは、同銃撃事件後の6週間で、企業幹部に対するオンライン脅迫も41%増加したと伝えている。

こうした状況を受け、ここ数カ月間で企業幹部の個人警備を強化したと、米国に拠点を置く13社がフォーブスに証言した。世界最大の民間警備会社である米アライドユニバーサルは、脅威評価の依頼が昨年の同時期と比べ1500%増加していると述べた。

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米警備会社ハミルトン・セキュリティーグループを設立したジェームズ・ハミルトンは、現在、多くの企業が不安を抱えていると語る。他方で、最近になって幹部の保護に新たに投資し始めた企業は不利な立場にあるという。その理由は、多くの警備会社はすでに長期顧客を抱えており、幹部全員の保護を任せられるほど信頼できる警備会社が不足しているためだ。ハミルトンは、「もしあなたが私に『事態が落ち着くまでの90日間だけ個人警備を雇いたい』と言えば、私は経営者としてそんなことはしたくない」と説明した。

こうした人材不足により、インターネット上で警備の専門家を装う業者も急増している。この業界は、米国では州単位で規制されており、厳格な資格要件を定めている州もあれば、そうでない州もある。国家で統一された基準がないため、専門家と詐欺師を区別するのは難しい。

リスク管理コンサルティングを手がける米インサイト・リスク・マネジメントの設立者クリス・ファルケンバーグは、「会社役員のボディーガードになりすますのは、実に簡単だ」と語る。「まず参入障壁が低い。州の資格が必要だが、それは数日間の訓練を受けるだけで取得できる。銃器所持許可証の取得も簡単だ。そしてサングラスを買いに行けば、どこからどう見ても役員のボディーガードに見えるだろう」

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翻訳・編集=安藤清香

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