経済・社会

2025.05.21 10:15

トランプ関税政策、日本は豊臣秀吉型、徳川家康型のどちらで行くべきか

Bendix M / Shutterstock.com

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トランプ米政権の高関税政策はドル、米債券、米株式の「トリプル安」を呼ぶなど、混乱が米国の足もとにも及んでいる。4月2日の政策発表から1週間後には「中国を除き、90日間の上乗せ課税停止」を発表。中国とも5月14日、互いにかけ合ってきた追加関税を115%ずつ引き下げた。そして、ベッセント国務長官は18日、CNNとのインタビューで18の重要な貿易相手国との交渉を優先していると同時に、地域によっては同率の関税を課す考えを示した。

米州住友商事ワシントン事務所の渡辺亮司調査部長によれば、「18の重要な貿易相手国」は公表されていないが、日本や、インド、ベトナムなどが含まれているとの憶測も出ているという。同時に、渡辺氏は、地域ごとに同率の関税を課すとしたベッセント氏の発言について「元々、90日間の停止期間中にすべての国とディールすることが不可能なのは、わかりきったことでした」とも語る。それだけでも、トランプ政権が行き当たりばったりで粗雑な政策を繰り返していることがわかる。

渡辺氏によれば、米中の関税引き下げの背景には、「米中の関税コストが消費者に転嫁され、物価高が始まる」という話が米国内で広がった事情があった。中国から輸入する安価の製品が米国内の店頭から消え、雇用の減少も予想された。米国メディアも5月に入り、中小企業の経営悪化や雇用への悪影響の可能性を繰り返し報道していた。トランプ氏もこうした状況を敏感に察知し、米中関税引き下げに走ったとみられる。

ただ、「世界最大規模のスーパーマーケットチェーン」で知られる米小売業大手ウォルマートの場合、商品の約6割が中国製品とされる。ウォルマートのダグ・マクミロン最高経営責任者(CEO)はたびたび米中の高関税の引き下げを求めてきたが、米中合意後の15日、合意によっても関税コストの一部を吸収しきれず、製品の値上げに踏み切らざるを得ない考えを示した。渡辺氏は「米国はこれから、バック・トゥー・スクール(新学期)セールの時期を迎えます。米中合意がなければ、子供に持たせるリュックサックや文房具などが品切れや値上げという状況に直面し、トランプ政権に対する批判が一気に噴き出す可能性も大いにあります」と話す。

ロイター通信によれば、5月第3週時点でトランプ氏の支持率は44%で、4月下旬時点と比べて2ポイント上昇した。渡辺氏は「トランプ氏が引き継いだ時点で、米国経済は新型コロナウィルスの影響から回復する基調にあり、インフレも収まりつつありました。まだ雇用やインフレ、GDP(国内総生産)といったハードデータに関税政策の影響が出ていないため、支持率を維持できたと思います」と説明する。

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文=牧野愛博

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