経営・戦略

2025.05.26 09:15

特許の数は増えるが質が低下、老舗企業の生きる道は

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長い歴史を持つ老舗企業はイノベーションが鈍化すると言われている。だからこそ、大手企業よりもスタートアップのほうが元気で革新力がありそうに見える。これまでの研究では、鈍化の原因は経営資源の組み替えが起こりにくくなる、つまり硬直化だとされてきたが、その程度を数値的に測った例はなかった。

そこで、早稲田大学商学学術院の清水洋教授、ウィスコンシン大学の山口翔太郎アシスタント・プロフェッサーらによる研究グループは、アメリカ企業の研究開発ポートフォリオを使ってその硬直性の測定を行った。通常は異なる企業の技術的類似性の想定に使われるコサイン類似度という手法を、ひとつの企業の過去と現在の比較に用いている。

するとそこでは、企業の年齢がますごとに研究開発で生み出される特許の件数は増えるが、質が低下するという負の相関が示された。ひとつの分野で長期にわたり研究を続けていれば、発明量は多くなるが革新性は低下する。研究開発ポートフォリオを外部環境に合わせた柔軟な調整が困難になるためだ。

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この結果を受けて研究グループは、加齢した企業は経営資源を柔軟に組み替えられるかどうかが戦略的に重要だと指摘する。この研究はアメリカ企業を対象にしたものだが、日本企業にも同じ傾向が見られた。むしろ、アメリカほど企業の新陳代謝が見られない日本では、30歳代の企業の硬直性がアメリカの90歳代の企業に匹敵するという。

企業の創出や退出の促進も重要だとしているが、悪いのは加齢ではなくあくまでも硬直化だ。研究グループは「同じ領域で研究開発を続けるからこそ到達できる成果」があり、また「既存の大企業はイノベーションで重要な役割を担うべき存在」だとも話している。この研究を、大企業が硬直せずにイノベーションを生み出し続ける道を考えるだ一歩にしたいということだ。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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