アート

2025.05.24 12:00

アートによるコミュニティの再生、新たな不動産開発モデルに?

ハドソンヤードの不動産開発プロジェクトの第一段階の一部である、マンハッタンのミッドタウンにあるパブリックアート「The Vessel」(Atilgan Ozdil/Anadolu Agency/Getty Images)

ハドソンヤードの不動産開発プロジェクトの第一段階の一部である、マンハッタンのミッドタウンにあるパブリックアート「The Vessel」(Atilgan Ozdil/Anadolu Agency/Getty Images)

不動産開発プロジェクトには、地域社会との関わりが欠けているように感じられるものもある。だが、米国では地元のアーティストたちの生活や作品に投資することを通じて、そうした「隔絶」に対応しようとする新たな動きが広がり始めている。

ジョージア州の州都アトランタのチョーズウッドパーク地区に完成した高級集合住宅「The Upton」は、「アートは人のつながりを生み、つながりはコミュニティを築き、コミュニティは暮らす場所を変化させる」との考えに基づき、デベロッパーがアーティスト・イン・レジデンスなどのプログラムを通じてその「基礎構造」に、クリエイティビティを織り込んだ物件だ。

創造性によるコミュニティの構築

The Uptonの開発を手掛けたMETAリアルエステート・パートナーズは、居住者のより良い生活を実現させるための方法を模索するなかで、この物件を「高級アメニティ以外の価値を持ったものにしたい」と考えたという。

そして発案されたのが、18カ月間のアーティスト・イン・レジデンス・プログラムだ。期間中、アーティストには無料で住まいが貸し出され、給付金も支払われる。

全米から候補者を募り、選考の結果選ばれたのは、複数の領域で活動するアダム・スティーブンソンや、アトランタを拠点とする画家のセージ・ギロリーなど、5人のクリエイターたち。彼らはThe Uptonで、制作やイベントへの協力といった活動を行っている。

METAリアルエステート・パートナーズのパートナー、ロブ・キンチェローは、物件全体に取り入れられたアートを手がけたそのアーティストたちがコミュニティの一員であるということが、物件の差別化につながり、入居者にとっての魅力になることを願っていると語る。

また、このプログラムのキュレーションを担当するアトランタの不動産管理会社、Gallery Residentialのメラニア・アーメンタは、運営チームとしては、「アーティストたちの活動によって居住者たちに促される内省が、最終的にはその人たちの帰属意識を深めることにつながると考えている」と述べている。

視覚的な魅力を持ち、感情的な共鳴を呼ぶ空間を作り出すため、アーティスト主導型のこうした取り組みに目を向けるデベロッパーは、他にもある。現時点では明確にそれがトレンドであるとは言えないものの、安定したひとつの分野となる可能性を持った、斬新な発想だといえるだろう。

Gallery Residentialが手掛けたその他のプログラムには、テネシー州チャタヌーガの「The Linden」、アラバマ州ハンツビルの「Stella at Five Points」、フロリダ州ペンサコーラの「The Tristan」などがある。

同社の共同創業者、トレイシー・バウアーズは、「私たちはアートを、単なる視覚的な要素以上のものだと捉えています。アートはコミュニティとアイデンティティ、永続的な価値への架け橋です」と話している。

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編集=木内涼子

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