経営・戦略

2025.05.26 13:30

「その景色、買います」 企業が京都の山荘を買う理由

三千院や寂光院といった名所で知られる大原は人口約2000人の盆地集落。吉川は「何もない自然でなく、人の暮らしがあることで、この景色が保たれている」という。

日本では室町時代から、“市中の山居”こそ本当の贅沢とされた。「囲炉裏や茶室のある、豪華というより素朴な空間。そこでふと茶碗に目を向けると桃山時代のものだったり、掛け軸に主人の趣味が表れていたりする」。そこは富を得た実業家にとって精神的な休息の場であり、交流の場でもあった。小林一三の影響で、松下幸之助も南禅寺に茶室をもち、庭をつくった。そうして文化が育まれていた。

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そんな真の数寄者、すなわち、主人を現代に蘇らせたい。KYOTO ARTSCAPEは、東邦レオの旗艦店としてだけでなく、文化に通ずる主人たる「お金の使い方」を示すショーケースでもある。

富が集中する現代において、それをいかに社会に還元するかは共通課題。文化に対しても、より粋な関わり方がある。それは、百聞は一見にしかずだろう。KYOTO ARTSCAPEは失われかけた日本の美意識を呼び覚まし、次世代へと繋ぐ仕掛けとなるだろうか。

吉川稔|東邦レオ 代表取締役社長
吉川稔|東邦レオ 代表取締役社長

吉川稔◎1965年、大阪府生まれ。神戸大学農学部卒業後、住友信託銀行を経て、リステアホールディングス取締役副社長などを歴任。2012年から東邦レオのアドバイザーとなり、16年に代表取締役社長に。クール・ジャパン官民有識者会議委員も務める。写真はkudan houseを象徴する窓を背景に、日本庭園で撮影。

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【お詫びと訂正】2025年7月掲載の本記事のライター名に誤りがございました。正しくは、文=鶴岡優子さんです。ご本人ならびに関係者の皆様、読者の皆様にご迷惑をおかけしましたことを、心よりお詫び申し上げます。

文=鶴岡優子 写真(ポートレート)=若原瑞昌

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