大規模言語モデル(LLM)を用いたAI(人工知能)の活用が拡大する中、ビジネスや消費者のあり方、組織間のコミュニケーション、そしてインターネットそのものが様変わりしつつある。
2022~24年公開のオンライン文書と投稿、計3億件以上を分析
米スタンフォード大学の博士課程に在籍するウェイシン・リャン(梁偉欣。Weixin Liang)が主導した最近の研究では、この変容の定量化を試み、企業のプレスリリースや求人情報から消費者のクレーム、さらには国連の報告書まで、ありとあらゆる領域でLLMを利用した文書作成が広く普及している実態を明らかにした。
2024年末の時点で、企業プレスリリースの24%、金融関連の苦情の18%、求人広告の10%、国連のプレスリリースの14%に、AIによる文書作成と編集が含まれていることが判明。AIの力を借りた文書作成が、半ば普遍的な事実となっていることがわかった。
「AIが頻繁に使用する単語とそうでない単語の使用頻度を定量化して比較し、さまざまな種類の文書において、それらの単語の出現率を長期的に追跡する方法を開発した」とリャンは説明している。
この研究では、2022~24年に公開されたオンライン文書と投稿、合わせて3億件以上を分析した。AIを使った文書作成の導入に関する実証研究としては最大級だ。
ウェブ上で急増するAI生成テキスト
AIが生成するコンテンツの利用者は、かつてはテクノロジーに精通したグループに限られていた。だが、2022年11月に米OpenAIの生成AIツール「ChatGPT」が公開されて以来、利用は急拡大し、数カ月もたたないうちに生成AIコンテンツの足跡がウェブ全体に広がり始めた。
リャンの調査によると、AI生成テキストの普及を先導しているのは中小企業だ。設立して日の浅い小規模事業者では、AIを使った求人広告が全体の15%に急増。企業の決算発表にも同じ傾向が見られ、2023年後半には決算書におけるAI使用が24%にまで高まった(その後は横ばいとなっている)。
「LLMの力を借りた文書作成がこれほど多様な分野で、これだけ急速に普及したことがわかったのは、大きな収穫だった」とリャンは述べている。「国連のようなハイレベルな国際機関でさえ、プレスリリースの約14%にLLMを使用していた」。
この増加傾向が示唆しているのは、AIを活用した文書作成の可能性と危険性の両方だ。良い面としては、LLMは効率化をもたらし、各分野の専門家がより迅速にコンテンツを作成できるようになる。一方で、AIの利用が行き過ぎれば、コミュニケーションが均質化され、コンテンツの信憑性に対する信頼が失われるだろう。



