2025年5月23日発売のForbes JAPAN7月号は「ビリオネアランキング2025 マスク、トランプの恩恵を受けたのは誰か?」と「未来は買える」を特集。毎年恒例のビリオネア特集で掲載する成功者の多くは、資産をもっていない時から、未来を買うために動いている。何を買うかにその人の理想が詰まっていて、それを実現するために、仲間や情報、お金を集めていく。では、人や企業はどんな理想を描いて、何を買うのか。その「買いもの例」から成功の道を探る。
さまざまなスキャンダルが発覚し、たとえ法廷で有罪判決を受けても決して傷つくことのない男。賠償金を値切り、自前の暗号資産で資金をひねり出す。それが、米国第47代大統領ドナルド・トランプだ。
この1年は、ドナルド・トランプにとってなんと劇的だったことか。12カ月前、彼の政治的な見通しは不安定で、財政的な先行きも悪夢のようだった。彼は4億1300万ドルのキャッシュをもっているとみられていたが、米ニューヨーク州では詐欺事件で4億5400万ドルの支払いを命じられていた。同州のレティシア・ジェームズ司法長官は「私は毎日40ウォール・ストリート(トランプ・ビル)を見ている」とトランプの資産差し押さえをほのめかしたが、一方のトランプは、自らが得意とすることをやった。つまり戦い、売り、勝利したのだ。そしてアメリカ合衆国第47代大統領となった彼は、推定資産を23億ドルから倍以上の51億ドルへと増やした。
トランプは、先延ばしにすることに勝利と同等の価値があることを過去に学習済みだった。4億5400万ドルを支払う余裕がないと認めたトランプの弁護団は、州控訴裁判所に保証金の免除または減額を提案。裁判所は常にそうした寛大な措置を認めるわけではないが、このケースではそれを認め、支払い額を1億7500万ドルに引き下げ、資産差し押さえを回避した。
そこからトランプは、なぜ自分がアメリカ史上最高のセールスマンなのかを示した。控訴裁判所が救済措置を決定した翌日、彼は自身のソーシャルメディア事業「トゥルース・ソーシャル」の親会社をナスダック市場に上場。事業としてはたいしたものではなかったが、トランプを愛する投資家たちがそのばかげたものに賭け、株価を法外な値段まで急騰させた。これで、トランプの資産は数十億ドルも増えた。その後、熱狂は冷め、株価は最高値から72%安となっているが、トランプは今も26億ドルの株式を保有している。
トランプの純資産は増加したが、彼が株を手放さなかったため、流動資産はなかった。彼は聖書、スニーカー、ギターなどさまざまなものを売りさばいていき、最終的には想像を絶する最も不合理な商品を売って問題を解決した。それは暗号資産だ。トランプは24年10月、ワールド・リバティ・ファイナンシャルというプロジェクトを開始。暗号資産の初心者をターゲットにした、「金融革命」というあいまいな約束と再販できないトークンによるものだ(彼は暗号資産の首席提唱者、息子のエリックとドン・ジュニア、そしてニューヨーク大学の新入生バロンがWeb3アンバサダーとなっている)。
これにはトランプが数週間後に大統領選挙で勝利するまで、ほとんど誰も気づかなかった。その後、規制緩和の兆しと、暗号資産トロンの創設者ジャスティン・サンによる7500万ドルの購入に刺激され、ほかの人々も群がり、最終的に推定3億9000万ドル、税引き後でおよそ2億4500万ドルがトランプのものとなった。



