大学時代の出会いから起業へ
マトゥルとクマールが初めて出会ったのは、インド工科大学ルールキー校に在学中のことで、マトゥルはは2013年に同校を卒業すると、ドバイのエネルギー企業に勤務し、クマールは米国でマイクロソフトのエンジニアとして働き始めた。
その後クマールは、社会貢献のためのクラウドファンディング・プラットフォームを立ち上げる計画をマトゥルに提案。ふたりは余暇の時間を使ってこのプロジェクトに取り組み始めたが、そのときに気づいたのが、小規模なスタートアップが直面する決済処理の難しさだった。
そこで彼らは、事業モデルを転換し、スタートアップ向けの決済プラットフォームの構築に乗り出した。これによりレーザーペイは、フードデリバリーのZomato(ゾマト)や映画業界スタートアップのPVR Inoxといった、インドにおける中小企業の成長を後押しするポジションを確立した。
その後数年で急拡大を遂げたレーザーペイは、2020年にシンガポールの政府系ファンドGICとセコイア・インディア(現ピークXVパートナーズ)が主導したシリーズDラウンドで1億ドル(約145億円)を調達し、評価額は10億ドル(約1450億円)とされた。これによりユニコーンの仲間入りを果たした同社は、その後も小規模事業者に特化した決済プラットフォームを中心として、ローン貸付や法人クレジットカードの発行などの分野に事業を拡大していった。
レーザーペイの投資家たちは、同社の今後のさらなる成長を見込んでいる。「この分野の競争は、50周にも及ぶ長距離レースのようなものだ」と語るのは、これまでに4度の資金調達ラウンドに参加したピークXVパートナーズのマネージングディレクターのイシャン・ミタルだ。「彼らはまだ5〜7周目を走った段階に過ぎない。今後の道のりは長い」と続けた。
レーザーペイは他の多くのインドのスタートアップと同様に、資金調達のしやすさから米国のデラウェア州で法人を登記している。しかし、今後の2〜3年で新規株式公開(IPO)を見据えるマトゥルは、本社をバンガロールに移す計画だ。そのためには、インドの規制当局からの承認を得るだけでなく、米国で最大3億ドル(約435億円)のキャピタルゲイン税の支払いに直面する可能性がある。
それでもマトゥルは、母国に会社を移したいと考えている。「ここが私たちのホームマーケットだから」と彼は語った。


