テスラの安全性評価
決算説明会でマスクは、オースティンでのテスト車両が「1万マイル(約1万6000キロ)に1回しか介入が必要にならなかった」と主張し、注目を集めていた。これまでテスラは「完全自動運転」をうたうFSD(フルセルフ・ドライビング)機能の安全性に関するデータを公表していないが、独自にデータを収集するテスラユーザーの報告では、「400マイル(約640キロ)に1回程度の介入」が必要だとされている。
そのため、テスラが仮に限定的な地域での運用に絞り、「徹底的な学習や調整」を行った結果として、「1万マイルに1回」という数字を提示したのだと解釈しても、マスクの主張は依然として「400マイルに1回」という情報から大きく飛躍しており、懐疑的な見方が多い。
マスクが真実を明かしていないという見方もあるものの、上場企業が決算説明会で「現在の事実」に関して虚偽の説明をすれば、訴訟リスクを追うことになる(これが「将来の予測」であれば、特定の条件を満たせば民事責任から保護される)。マスクは、ロボタクシーと人型ロボットの「オプティマス」に会社の将来を賭けていると明言しており、彼が政府効率化省(DOGE)の役割を担って以降に大きく下落したテスラの株価が、ここ最近回復傾向にある背景には、投資家のロボタクシーへの期待がある。
マスクは今後、「人間による監視を受けないロボタクシー」という約束を果たせなかったことに関して、「あの発言は、車内に人がいないことを意味していた」と釈明する可能性が高い。しかし、リモートによる運転が多用されるのであれば、それはもはや「自動運転」とは呼べず、大規模な展開にも不向きなものになる。
テスラは、昨年10月のオプティマスの発表会においても、このロボットを従業員が遠隔で操作していたと報じられていた。また、同社は実際に「リモートの運転システム」の開発者の募集を行っている。
ここまで述べてきたように、テスラのロボタクシーは大きなリスクを伴う形で始動しようとしている。ウーバーの自動運転部門のUber ATGは、2018年の試験運転中に歩行者をはねて死亡させた後に閉鎖された。また、ゼネラルモーターズ(GM)傘下のロボタクシー企業クルーズも、2023年10月のサンフランシスコでの重大事故を経て、2024年12月に閉鎖された。早すぎるサービスの立ち上げの代償はきわめて大きい。
テスラは、これ以上スケジュールの遅延を重ねないために何らかの形でローンチを行う必要があるが、それは重大な結果を招く可能性がある。


