バイブスを「現実的」にするには
率直に言って、AI界でバイブスを使った評価を止めさせるのはかなり難しい。バイブスという言葉は温かく、魅力的で、批判を退ける力を持っている。バイブス懐疑派が声を上げても、支持派が引き下がる可能性は低い。
バイブスは今後も定着していく。
特に懸念されるのは、AI開発者がLLMを「より強力なバイブスを出せるように」設計する方向に振り切る可能性があることだ。すると、他の技術的進歩が軽視され、結局「バイブスを高める」ことばかりに労力が注がれるかもしれない。言い換えれば、AIの品質向上において、バイブスが議論や改善のすべてを奪ってしまう恐れがある。
ここで思い出されるのは「火で火を消す」という古いことわざだ。バイブスを排除できない以上、逆手を取って定量化してしまおうという発想である。つまり、AIのバイブスを測定可能な複数の項目に分け、それらを標準化しようという提案だ。
この提案の概要を簡単に述べさせてほしい。
第一に、AIバイブスの本質を、明確な測定構成要素に分解する必要があるだろう。
いくつかアイデアをざっと挙げてみよう。会話の流れは、ユーザーの応答性や対話のターン数などに基づいて計算できるかもしれない。別の要因としては、AIのトーンとユーザーのトーンを測定する感情整合性スコアが考えられる。また、LLMとの会話後のユーザーによる評価に基づくエンゲージメントと好感度のスコアリングもあるかもしれない。これらはほんのいくつかの提案であり、創造的なアイデアを引き出すことを意図している。
第二に、そうした明確な測定構成要素は審議され、最終的にはAIコミュニティが容易に実装できる実用的な標準に作り上げられる必要がある。その考えは、標準が各AI開発者の評価を正直に保ち、独自の専有的尺度の作成を許さないということである(彼らは依然としてそうできるだろうが、標準尺度についても報告する必要があるため、依然として厳しい監視下に置かれることになる)。
第三に、標準尺度が利用可能になれば、AIのリーダーボードがバイブス指標について報告し始めることが期待される。その美点は、第三者も同じ評価を実行できることだ。バイブスの主張を誇張したかもしれないAI開発者が見つけ出される可能性がある。他の競合するAI開発者は、そのような「競争条件を公平に保つ」アプローチを確かに歓迎するだろう。
筆者が「バイブス」を感じるものは
最後に。
とはいえ、「バイブスは言葉以上のものであり、数値化した途端にその本質を損なう」という反論もある。バイブスはそもそも、あるかないかであり、数字に落とし込めるものではないという主張だ。
筆者としては、AIバイブスがこのまま根を下ろしていく以上、それを何らかの形で現実的に扱えるようにすることに「バイブス」を感じている。好むと好まざるとにかかわらず、バイブスという概念はもはや消えそうにないからだ。


