最も危険な都市はヒューストン
28都市中、最も急激に地盤が沈下しているのはヒューストンだ。都市面積の12%以上で年間沈下量が10mmを超え、局所的には最大50mmも沈下していることが明らかになった。同じテキサス州のフォートワースとダラスも、これを追随するペースで沈下が進んでいる。ニューヨークのラガーディア空港周辺や、ラスベガス、ワシントンD.C.、サンフランシスコでも、局所的に急激な地盤沈下が生じている。
また、都市全体でみると、9都市(ニューヨーク、シカゴ、ヒューストン、ダラス、フォートワース、コロンバス、シアトル、デンバー)で面積加重平均の沈下率が年間2mmを超えていた。
地盤沈下の原因
人口密度との兼ね合いでは、沈下地域に住む人口の60%が8都市(ニューヨーク、シカゴ、ロサンゼルス、フェニックス、ヒューストン、フィラデルフィア、サンアントニオ、ダラス)に集中している。これらの都市では2000年以降に大規模な洪水が計90回以上発生しており、地盤低下が原因の1つだと研究チームは指摘している。
論文によると、米大都市における地盤沈下の80%は地下水の汲み上げに起因している。都市の急成長に伴って地下帯水層からの淡水の汲み上げ量が急増し、地下水の補充が間に合わなくなっているためだ。テキサス州ではさらに石油やガスの採掘が問題を悪化させているという。
「都市が成長を続ければ、より多くの都市で地盤沈下地域が拡大していくだろう」とオヘンヘンは指摘。「長い目で見ると、こうした地盤沈下によってインフラに安全限界耐力を超える負荷がかかる恐れがある」と警鐘を鳴らす。
問題を指摘するだけでは不十分
研究チームは対策として、地下水の汲み上げをより慎重に管理すること、建物やインフラのレジリエンス性能を高めること、モニタリングを強化することなどを提案している。「ただ問題だと指摘するだけでなく、私たちには(問題に)対応し、対処し、緩和し、適応することが可能だ。解決策を講じなければならない」とオヘンヘンは語った。
2023年の研究では、ニューヨーク市内にひしめく100万棟を超える建物の重量と絶え間ない建設工事が地盤沈下の原因となっており、将来の洪水リスクが増大している可能性があることが指摘されている。


