広がるモレスキンの世界
黒い表紙の「クラシック」と呼ばれる伝統的なモレスキンのノートブックは、時代を超越したデザインコードを継承しつつ、カラフルなカバーや革新的なスタイルを取り入れ、長年にわたりラインナップを拡大してきた。コルク複合素材の螺旋綴じを採用した「スパイラルプランナー」などはその一例だ。限定版の「さくらコレクターズボックス」には2冊のノート、ドイツ製カヴェコの万年筆、桜を模ったピンバッジなどが同梱されている。最近では「スヌーピー」でお馴染みの米国の漫画『ピーナッツ』75周年を記念してコラボレーションした限定コレクションが発売されたばかりだ。
同社は数年前、紙のページに手書きしたアイデアを瞬時にデジタル化する「モレスキンスマート」という製品を導入してデジタル分野への進出にも成功し、今夏にはAI(人工知能)を利用したアプリの提供開始も予定している。「私たちはニーズに合わせて製品を作っているのです」とアルシャンボーは言い、時にはデザインへのインプットを得るために社外のアーティストと協業することもあると付け加えた。
誰もが欲しがるノートブックに加えて、モレスキンの製品群にはペンや鉛筆、バッグ、さらには眼鏡なども含まれ、世界中の小売店で販売されている。同社は独立型直営店の「モレスキンストア」も展開しており、現在の60店舗から今後数年間で150店舗程度まで拡大することを目指している。また、ジュネーブ空港などにある「モレスキンカフェ」では、エスプレッソの刺激とともに紙とペンで創造性を発露する機会を提供している。
才能を解き放て
芸術性と普遍的な手書きのパワーを理念の中核に置くモレスキンにとって、4月にイタリアで開催されたミラノデザインウィークは紙とペンの力を称える絶好の機会となった。このイベントでは「才能を解き放つ」というテーマが、アナログおよびデジタルの展示や体験型ワークショップによって表現された。天井から吊り下げられた巨大な脳の形の彫刻は、折り紙から着想を得て現代芸術家のアントニオ・ピニャテッリが制作したもので、手書きの力がドラマチックに視覚化されている。この彫刻は、それ自体が芸術的なモレスキンの紙で作られている。
モレスキンの魅力は、同社がキュレーションしたノートブックを展示する巡回展「Detour(回り道)」でも発見できるだろう。その会場には、国際的に著名なアーティスト、建築家、映画監督、グラフィックデザイナー、ミュージシャン、イラストレーター、作家などが装飾を施し、造形芸術やグラフィックノベルに変貌したモレスキンのノートブックが展示されている。Detourは上海、パリ、ニューヨーク、ロンドンを回り、直近ではミラノで開催された。
モレスキンの共同創業者であるセブレゴンディが会長に就く非営利組織、モレスキン財団は、文化・社会的経験に乏しい地域の子どもたちを支援し、教育による創造性を促進している。財団が収蔵する芸術作品は現在1500点を超え、ゆくゆくはモレスキン博物館の核となる予定だ。
科学者や教育者、芸術家が、研究によって裏付けされた手書きの利点を称える今、ノートブック事業の商機であることは疑う余地がない。
「デジタルの世界は、人々が自分自身とつながる必要性を誘発したのだと、私は考えています。落ち着いて熟考し、表現する必要性です」と、アルシャンボーは言及した。そしてモレスキンについて、次のようにシンプルにまとめた。「良いモレスキンは、使い込まれたモレスキンです」。


